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裁判所速記官の養成再開及び活用を求める会長声明

裁判所速記官の養成再開及び活用を求める会長声明

 日本国憲法は,刑事裁判において「公平な裁判所の迅速な公開裁判を受ける権利」を被告人の権利として保障している(憲法第37条)。また,裁判一般については,2003(平成15)年に成立した「裁判の迅速化に関する法律」が,司法を通じた権利利益の実現など司法の役割を十全に果たすために迅速な裁判が求められることを定め,裁判の迅速化を図る方策を講じることについて国・裁判所その他関与者に求めている。

ところで,裁判において,正確で公平な尋問調書等が作成されることは,公正かつ迅速な裁判を実現するために不可欠である。そのために,裁判所法第60条の2第1項は「各裁判所に裁判所速記官を置く」と定め,各裁判所に裁判所速記官を配置することを法律上義務づけている。ところが,最高裁判所は,1998(平成10)年度から,裁判所速記官の新規養成を停止した。そのため,最大時には825名配置されていた裁判所速記官が,2015(平成27)年2月時点で204名にまで減少し,管内に裁判所速記官が一人も配置されていない地方裁判所が出現するまでに至っている。このまま推移すれば,遠からず,大都市圏の地方裁判所管内以外には,裁判所速記官がいなくなるという事態が生じることが強く懸念される。

現在,最高裁判所は,裁判所速記官による速記に代替するものとして,民間業者に委託した録音反訳方式を導入し,調書等を作成している。しかし,録音反訳方式では,調書作成までに時間がかかり迅速な裁判の観点から問題があるばかりでなく,法律用語等に精通していない業者も多いことから,誤字・脱字などの問題が多いと指摘されている。また,民間業者は法廷での尋問等に立ち会っていないことから,聞き間違いや言葉の取り違えなどの問題が生じがちである。しかも,民間業者に委託することは情報管理の観点からも,訴訟関係者のプライバシー等の情報流出等の危険をはらんでいると言わざるを得ない。

さらに,2009(平成21)年から,裁判員裁判制度が開始され,一定の重罪事件において,一般市民が事実認定や量刑判断に関与しているが,裁判員の的確な判断を担保するためには,法廷でのやりとりや証言内容を確認することが必要である。最高裁判所は,コンピュータによる音声自動認識システムを導入し,証言・供述を検索できるようにしているが,音声自動認識システムは,いまだに音声認識の精度が低く,文字再現が不正確であるために,検索が困難となる場合も多いと指摘されており,裁判員の公平かつ的確な判断を支援する仕組みとしては,極めて不十分であると言わざるを得ない。

反面で,今日,裁判所速記官による速記は,コンピュータを組み込んだ速記機械と反訳ソフトウェアの開発により,法廷での質問及び応答を直ちに文字化し,即日のうちに速記録を作成することが可能なまでに至っている。裁判所速記官は,法律用語等にも精通しており,法廷での尋問等に立ち会っていることから,発語が聞き取りにくいなどの場合には,その場で確認を行うことができるので,誤字・脱字,聞き間違いや言葉の取り違えなどの危険も少ない。このように,裁判所速記官の作成した速記録は,より正確で公正なものであると言え,かつ,即座に作成が可能である。

国際的には,法廷における質問や応答を記録する方法として,リアルタイム速記で行うことが主流となりつつある。アメリカでは,我が国で裁判所速記官の養成が停止された当時約3万人であった速記者が現在では6万人を超えて活用されている。また,オランダ(ハーグ)の国際刑事裁判所においても,リアルタイム速記が活用され,審理内容が短時日のうちに公開されている。このような状況において,最高裁判所が裁判所速記官の養成を停止し続けていることは,世界の流れにも逆行し,憲法や法が要請する裁判の公正・迅速に自ら背を向けるが如きものであると言わざるを得ない。

裁判所速記官による即時の文字化を利用し,これを法廷内のスクリーンに映し出すなどすれば,裁判員裁判において裁判官や裁判員がその場で法廷での供述内容等を確認することが可能になる。また,裁判員裁判以外の刑事裁判や民事裁判においても,裁判所速記官による正確な尋問調書の作成が即座になされれば,訴訟関係者による訴訟の準備に役立ち,公正かつ迅速な裁判に資することは明らかである。

したがって,当会は,最高裁判所に対して,直ちに裁判所速記官の養成を再開するとともに,広く裁判所速記官を活用することを,また,国に対し,裁判所速記官の養成と活用を可能とするための司法予算の増額を,強く求めるものである。

 

2016(平成28)年7月12日
福島県弁護士会
会 長  新 開 文 雄

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