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女性留置者の留置施設を適正に配置することを求める意見書

           女性被留置者の留置施設を適正に配置することを求める意見書
                                                                      2024年(令和6年)3月4日

福島県警察本部 御中 

                                                                           福島県弁護士会
会長  町  田    敦

意見の趣旨
 当会は、身体拘束されている被疑者及び被告人の権利を擁護するため、福島県警察本部に対し、郡山北警察署のみならず、福島警察署、会津若松警察署及びいわき中央警察署にも女性被留置者を留置する体制を維持することを求める。

意見の理由
第1 接見交通権の保障
1 接見交通権は、憲法第34条前段の保障に由来するものであり、身体拘束された被疑者及び被告人(以下「被疑者等」という)が弁護人の援助を受けることができるための刑事手続上       最も重要な権利に属するものであるとともに、弁護人からいえば固有権の最も重要なものの一つであるが、現実に被疑者等が弁護人または弁護人になろうとする者(以下「弁護人等」という)と迅速且つ容易にアクセスできない客観的状況であれば、その権利は保障されていないに等しい。
2 各地域における法律事務所の所在地の分布によっては、少年や女性被留置者が特定の留置施設に集中留置されることで、弁護人等の法律事務所から勾留場所へのアクセスが極めて困難 となる場合がある。
被疑者等が弁護人等と迅速且つ容易に接見でき、弁護人等から適切な助言を得られる状況にあることは、接見交通権の実質的保障における最低条件となるものであるから、留置施設に集中留置されることによって弁護人等の法律事務所から勾留場所へのアクセスが著しく困難となることは、被疑者等の接見交通権を侵害するものといえる。

第2 女性被疑者等の集中留置及びその問題点
1 集中留置及びその問題点
令和5年12月に福島県警察本部留置管理課に所属する職員が当会に対し   て行った説明によれば、現在、女性被疑者等が福島警察署、郡山警察署、会津若松警察署、及びいわき中央警 察署に分散留置されている状況を見直し、令和6年4月以降、郡山北警察署を女性専用留置施設とし、県内の女性被疑者等の留置を同警察署に集約させる予定とのことである。
まず、代用刑事施設制度は、本来は法務省所管の拘置所に収容されるべき勾留決定後の被疑者等を引き続き警察の留置場に収容するものであり、国際人権規約にも反し、許されるべきでない点は言うまでもないが、拘置所収容までの一時的な収容場所としても、今回の留置施設の集約化について以下問題点を指摘する。
本県は全国の都道府県の中で3番目に広い面積を有しており、郡山支部を除く県内各支部の事務局所在地から郡山北警察署までの片道距離は、     
福島支部 58.9km    
会津若松支部 59.5km
白河支部 46.2km     
相馬支部 106km     
いわき支部 81.6km  
と、いずれも相当な遠距離である。

    これまでのように女性被疑者等が福島警察署、郡山警察署、会津若松警察署、及びいわき中央警察署に分散留置されていた状況であれば、各支部の弁護士が数分から1時間程度で勾留場所に赴くことができたのに対し、仮に県内の女性被疑者等が郡山北警察署に集中留置されることとなれば、郡山支部以外の支部に所属する弁護人等のほぼ全員が接見1回あたり片道50km以上の移動を余儀なくされることとなり、従前に比して女性被疑者等の接見に要する時間が著しく増大することとなる。
人口減少と刑法犯の減少傾向に鑑み、警察組織の人員及び施設の効率的活用の要請があること自体を否定するものではないが、上記のような接見交通権の重要性に鑑みれば、警察組織の人員及び施設の効率的活用の要請に起因する不利益を被留置者に安易に転嫁させることには慎重であるべきであるうえ、女性被疑者等を福島警察署、郡山警察署、会津若松警察署、及びいわき中央警察署にのみ留置することとしたのは令和4年5月20日以降であって(同日付「女性被留置者に対する適正処遇の徹底について(通達)」)、2年も経たない間に更に女性被疑者等のみ集中留置する必要性があるのか疑義がある。
なお、迅速な接見の必要性を重視すれば、郡山支部所属の弁護士が県内全ての女性被疑者等の弁護人等を担当するとの方策も考えられるが、福島県警察本部留置管理課職員の説明によれば、勾留請求や公判請求等は事件の発生場所を管轄する裁判所へ行うとのことであるから、仮に女性被疑者等の弁護人等を全て郡山支部所属の弁護士が担うとすると、検察官請求証拠の謄写や公判期日への出頭、被疑者等の家族との面会、示談交渉及び社会復帰に向けた環境調整等のために多数回の長距離移動を強いられることとなり、充実した弁護活動に支障が生じることとなりかねない。
特に女性被疑者等の場合、統計上、窃盗(万引き)や薬物犯罪により逮捕・勾留されることが多いところ、事件発生地は女性被疑者等の居住地に近い場所であることが多いため、多くの事件において、家族との面会、示談交渉及び環境調整等のための移動負担は大きくなると見込まれる。
以上のとおり、県内の女性被疑者等を郡山北警察署に集中留置することは、被疑者等の接見交通権を実質的に侵害することとなるおそれを多分に孕んでおり、そうした事態を回避するため留置施設近くの弁護士に一律に弁護人等の役割を担わせることとすれば、接見以外の弁護活動に支障が生じることとなる。
2 女性留置施設に関する他県の状況
(1)仙台高等裁判所管内の状況
ア  宮城県
仙台弁護士会によれば、仙台中央警察署及び若林警察署の2つが女性留置施設として運用されているとのことである。
イ 山形県
山形県弁護士会によれば、米沢警察署、上山警察署及び鶴岡警察署の3つが女性留置施設として運用されているとのことである。
ウ 岩手県
岩手弁護士会によれば、2022年4月より、盛岡東警察署及び花巻警察署の2つが女性留置施設として運用されているとのことである。
エ 秋田県
秋田弁護士会によれば、秋田臨港警察署及び横手警察署の2つが女性留置施設として運用されているとのことである。
オ 青森県
青森県弁護士会によれば、青森警察署及び八戸警察署の2つが女性留置施設として運用されているとのことである。
カ 以上より、仙台高等裁判所管内では、福島県を除く5県において、同一県内に複数の女性留置施設が確保されている状況ということとなり、福島県のみ女性留置施設一箇所となる    のは、かかる観点からも不均衡である。
キ 以上のとおり、仮に福島県内の女性被留置者を郡山北警察署に集約させることとなった場合、それによって女性被留置者が被る接見交通権侵害の程度は、仙台高等裁判所管内にお いて最も深刻といえる。
(2)仙台高等裁判所管内以外の状況
福島県とほぼ同等の面積を有する長野県(福島県は13,784.14K ㎡で全国3位、長野県は13,561.56K㎡で全国4位)においては、県内の女性留置施設が令和6年2月29日まで3箇所(安曇野警察署、千曲警察署及び諏訪警察署)、同年3月1日以降も2箇所(千曲警察署及び安曇野警察署)は確保されるとのことである。 
こうした長野県の状況と比較からも、福島県において、女性留置施設を1箇所に集約することによる接見交通権侵害の程度は大きいといえる。

3 性の平等の観点からの問題
県内の女性被疑者等の留置を郡山北警察署に集約させることによる不利益は、被留置者の女性であるという属性のみを理由として生じるものであり、性の平等に悖るものである。

   留置施設職員による女性被留置者へのわいせつ行為を未然に防ぐという目的についても、福島県警本部内部の事情であり、本来、留置施設職員に対する指導教育体制の確立強化、適切な人員確保と配置、監視カメラ等の設置といった他の手段により解決を図るべきものであって、女性被留置者の権利擁護の要請に安易に優先させるべきではない。

4 結論
以上のとおり、令和6年4月以降、郡山北警察署を女性専用留置施設とし、福島県内の女性被疑者等の留置を同警察署に集約させるとすることは、接見交通権の保障及び性の平等を侵害するおそれが大きいものである。
福島県警察本部においては、こうした女性留置施設の集約に伴う問題を十分に考慮した上で、郡山北警察署以外にも女性留置施設を配置する等の措置を講じることが是非とも必要である。
福島県警察本部自身が令和4年5月20日付「女性被留置者に対する適正処遇の徹底について(通達)」において県内4箇所に女性留置施設を確保することとしてから未だ日が浅く、また、同通達を早期に変更すべき事情も認められないことを踏まえれば、今後も、同通達で女性被留置者の留置場所として挙げられた福島警察署、会津若松警察署及びいわき中央警察署に引き続き女性被留置者を留置し得る体制を維持すべきである。
よって、当会は、福島県警察本部に対し、意見の趣旨記載のとおり求める。
以上

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