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原子力損害賠償紛争解決センターの和解仲介手続における東京電力の不当な和解案受諾保留に抗議し・・・

原子力損害賠償紛争解決センターの和解仲介手続における東京電力の不当な和解案受諾保留に抗議し、迅速な和解仲介手続の進行を求める会長声明

近時、原子力損害賠償紛争解決センター(以下、「センター」という。)に和解仲介手続(以下、「ADR」という。)が係属している案件について、申立人の中に、東京電力ホールディングス株式会社(以下、「東京電力」という。)を被告とする原子力損害の賠償請求訴訟(以下「別訴」という。)の原告が含まれている場合、東電がADRにおいて、当該申立人に関する和解案について「(別訴の)判決が確定するまで、和解案の全部または一部の諾否を原則として留保する」旨の対応をするケースが相当数報告されている。こうした対応は、東京電力の明確な方針に基づくものと考えられる。
同一当事者がADRの申立人となるとともに、別訴の原告となっているケースはこれまでも存在してきた。これらのケースにおいて、両手続きにおける請求項目や請求にかかる対象期間が重複する場合も生じ得るところであり、重複請求となっているかについては検討が必要であるが、これらが真に重複するものと解される場合でも、いずれか先行する手続においてすでに支払われた賠償額があれば、後行手続において東電側から弁済の抗弁を提出させるなどして既払控除を行うことにより、支障なく解決できるものである。また、現実にも、後述する群馬訴訟判決や生業訴訟判決などにおいては、ADR等において東京電力から既に支払われた賠償金(既払金)がある場合には、既払金を超える損害があるかを判断し慰謝料額等を認定しており、こうした手法により、二重払い等が生じることを支障なく回避できている。
そもそも、センターにおけるADRは、原子力損害の賠償をめぐる当事者間の紛争を簡便な手続により迅速に合意解決するという目的の下に行われているものであり、厳密な主張立証に基づいて紛争の終局的解決を目指す(故に審級制度も採用されている)訴訟手続とは異なる。その上、これまでADRにおいて和解が成立した事例においても、精算条項を付さない、請求項目や対象期間を限った和解条項とされているなど、別手続での終局的解決をも念頭に置いた和解とされている事例が多数である。
現在、被害者らによる集団訴訟は全国各地の裁判所で係属しており、これらの集団訴訟について一審判決が下されつつある状況ではあるが、これら集団訴訟においては、提訴から一審判決まで3年以上を要するのが一般的である。また既に一審判決が下された群馬訴訟(2017年3月前橋地裁判決)、千葉訴訟(同年9月千葉地裁判決)、生業訴訟(同年10月福島地裁判決)については、いずれも控訴審に移行しており、判決が確定するのがいつになるかは、現時点では全く不透明である。かかる状況の中で、仮に別訴の判決が確定するまでADRの和解案受諾がなされなければ、原子力損害の被害者は、長期間にわたって賠償を受けることができず、簡便な手続による迅速な賠償の実現というADRの目的を著しく損なう結果となるとともに、被害者にとって極めて酷な事態となることは明らかである。未曾有の事故被害に遭いながら、その事故の責任を問うべく法的手続をとった被害者に対し、事実上適正迅速な賠償を放棄するかのような態度を表明するという東電の対応は、事故の当事者としての責任を放棄していると評価するほかない。
上記から、別訴の判決確定までADRの和解案の諾否を留保するというような東京電力の対応は、ADRの目的を著しく損ねるおそれがあり、相当性を欠くことが明らかであるとともに、東京電力が自ら掲げる「3つの誓い」(損害賠償の迅速かつ適切な実施のための方策)の一つである「和解仲介案の尊重」すなわち「紛争審査会の指針の考え方を踏まえ、紛争審査会の下で和解仲介手続きを実施する機関である原子力損害賠償紛争解決センターから提示された和解仲介案を尊重するとともに、手続きの迅速化に引き続き取り組む」という点にも完全に反するものであると言わざるを得ない。
したがって、当会は、東京電力のかかる対応について強く抗議し、東京電力が上記「3つの誓い」に忠実な対応をとること,具体的には,同一当事者がADRを申立てつつ別訴の原告になっているケースにおいても,請求項目や対象期間を個別に考慮して重複請求となるか慎重に判断し,重複請求と言えない場合や,重複請求となる場合でも争いのない部分については速やかに和解仲介に応じ支払いをするなど,ADRの趣旨を踏まえた対応をとることを求める。また,センターに対し、東京電力のかかる対応に対しては毅然とした対応をとり、迅速な和解仲介手続の進行に努めることを求める。
同時に、東京電力がADRにおいてかかる不当な対応をとることができるのは、ADRに片面的裁定機能が存在しないことによるものである。当会は、2014年(平成26年)1月31日付「原子力損害賠償紛争解決センターに対し片面的裁定機能を付与する立法措置を求める会長声明」等において、センターの和解案の提示に加害者側への裁定機能(片面的裁定機能)を法定し,東京電力側が一定期間内に裁判を提起しない限り,裁定どおりの和解内容が成立したものとみなすとの立法による手当を行うことを提言しているが、当会は、あらためて、国に対し、かかる内容を含む立法措置を行うことを強く求めるものである。

 2018(平成30)年2月8日

福島県弁護士会
会 長  渡邊 真也

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