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南相馬市における生活保護停廃止事案の審査請求裁決についての会長声明

1.本年12月21日、福島県知事は、南相馬市における生活保護の停廃止・保護変更処分に関する審査請求について、3名の当事者に対する処分を、いずれも取り消すとの裁決をなした(以下、「本件裁決」という。)。

南相馬市における生活保護の停廃止・保護変更処分(以下、「処分」と総称する。)は、東日本大震災及び東京電力福島原発事故に関して、南相馬市在住の生活保護受給者が支払いを受けた義援金や東京電力「仮払補償金」(以下「義援金等」という。)を収入と認定され、生活保護を停廃止され、あるいは保護費を減額されたというものである。

当会と日本弁護士連合会(日弁連)が共同で本年7月22日に行った現地調査における南相馬市生活保護担当者の答弁によれば、同市内の震災前の生活保護受給世帯403世帯のうち、同日までに、219世帯が、義援金等の収入認定により、生活保護の廃止処分を受けたことが明らかとなっており、その後の調査では、生活保護の停廃止処分を受けた世帯はさらに増加している。

このような状況の中で、当事者3名が、本年7月28日付で行った福島県に対する不服審査請求に対し、本件裁決が下されたのである。

2.本件裁決では、3名の当事者に対し、南相馬市が行った処分は、いずれも違法な処分であると判断されている。

3名のうち、2名に対する処分について、本件裁決は「(処分庁である南相馬市福祉事務所が)自立更生計画についての確認を行った形跡は一切認められない」「臨時訪問等必要な調査を実施しておらず…(被保護者との面会を行ったのは)本件処分後である」などとして、処分庁が、必要な調査や確認を怠っていた事実を適切に認定し、被保護世帯の震災後の生活実態の把握や自立更生計画の作成より以前に、生活保護の停廃止等の処分を行っていたことを厳しく指摘している。このように本件裁決は、処分庁の処分に至る手続のずさんさを厳しく認定した上で、これは、生活保護法第56条に定める不利益変更の原則に違反するとして、処分を違法と認定し、取り消した。

ほか1名についても、本件裁決は、処分の決定通知の記載について「明らかに誤っている」「誤解を与える記載」であると認定し、処分理由の告知を求める行政手続法第14条第1項の規定に違反するとして、処分を違法と認定し、取り消したものである。

3.このように、本件裁決は、南相馬市が義援金等の収入認定を理由として行った生活保護停廃止・保護変更処分について、処分手続そのものや処分に至る過程での手続的瑕疵・ずさんさを厳しく指弾し、これを違法とするものである。南相馬市は、同市の生活保護行政のずさんなあり方を指摘されたものとして、本件裁決を真摯に受け止めるべきである。同時に、南相馬市では、義援金等の支給がなされて以降、本年6月ころから7月ころにかけて、大量に生活保護の停廃止処分を行っているが、本来、家庭訪問等による生活実態・被災実態の把握や自立更生計画の丁寧な説明・聴き取りなどを前提として行っていれば、このような短期間のうちに、このような大量の処分を行うことなどできないはずである。その意味で、審査請求人3名は、まさに氷山の一角であり、これ以外にも、同様のずさんな手続によって、生活保護の停廃止等の処分を受けた被保護世帯が多数存在することは、容易に推測できる。

4.当会は、本年6月6日付で「生活保護制度における義援金等の収入認定について適正な取扱いを求める会長声明」を発出し、福島県及び県内の生活保護実施機関に対し、少なくとも第一次配分にかかる義援金については収入認定から除外すること、原発事故が収束するまでの間自立更生計画の提出を強制しないこと、自立更生計画の策定や収入認定にあたり、個別の事情聴取により、各被保護者の生活実態や要望を十分に把握し、これらが最大限に自立更生計画に盛り込まれるよう配慮することなどの取り扱いを求めてきた。また、前述のように、7月22日には、日弁連と共同で南相馬市の現地調査を実施し、さらに、本年9月21日には、南相馬市で生活保護110番(電話相談、面談相談)を行うなど、取り組みを強化してきたところである。本件裁決は、上記6月6日付会長声明で求めた内容である「自立更生計画の策定や収入認定にあたり、個別の事情聴取により、各被保護者の生活実態や要望を十分に把握する」ことを、南相馬市が怠ったこと及びその違法性を、福島県が厳しく指弾したものであって、その意味で、今回の裁決は重要な意義を有するものである。

5.当会は、南相馬市に対し、今回の裁決を真摯に受け止め、当事者3名のみならず、同様に義援金等の収入認定を理由として生活保護停廃止・保護変更等の処分を行った全てのケースについて、改めてその処分の内容や判断理由、処分に至る手続を厳しく精査し、当事者3名と同様の例があった場合には、自ら処分の見直しを行うよう、強く求めるものである。

2011年(平成23年)12月28日
福島県弁護士会
会長 菅野 昭弘

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