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国選弁護制度の基礎報酬及び各種弁護費用の抜本的改善を求める会長声明

刑事被告人が自ら弁護人を依頼することができないときに、国において弁護人を付することは、憲法上、保障された被告人の重要な権利であり、国選弁護制度は、刑事被告人の防御権を保障するために不可欠な制度である。2006年(平成18年)10月から、被疑者国選弁護制度が導入され、2018年(平成30年)には被疑者が勾留されている全事件に対象が拡大した。

2025年(令和7年)7月に作成された「改正刑訴法に関する刑事手続の在り方協議会」の取りまとめ報告書によれば、近年、9割近い被疑者が捜査段階において国選弁護人を選任し、ほぼ全ての事件において24時間以内に国選弁護人が指名されている等、その堅調な利用が確認された。

また、近年では、袴田事件、福井女子中学生殺人事件と、相次いで再審無罪判決が出され、他にもプレサンス事件、大川原化工機事件など、冤罪事件は跡を絶たず、刑事弁護活動の重要性が改めて認識されている。

当会もこれまで、国選弁護制度が被疑者・被告人(以下「被疑者等」という。)の権利擁護のために憲法上必須の制度であるとの認識の下、当番弁護士制度や取調べ立会いの援助制度、罪に問われた障害者等に対する刑事弁護費用等の援助制度等を創設してきた。時代の進展に合わせ高度化する刑事弁護活動を、費用負担の心配なく市民が享受できるよう、弁護士の負担によって様々な体制の拡充に注力してきた。

しかし、これらの諸措置は、無罪推定の原則が憲法上保障される我が国において、本来全て国費によるべきものである。前述の在り方協議会で取り上げられた多岐に亘る新たな刑事弁護活動を含めて、国費で賄われることを前提に、これを支える確固とした予算措置の議論が必要不可欠である。そして、かかる議論の中で、現行の国選弁護制度の基礎報酬及び各種弁護費用が極めて不十分であることに対する抜本的な解決も図られるべきである。

すなわち、国選弁護事件の平均的な報酬は、捜査・公判段階ともに事務所経営を維持しながら適正な弁護活動を行うために必要な対価としては極めて低廉である。その上、裁判官に対する報酬や検察官に対する俸給が法改正により漸次増額されているのに対し、国選弁護制度の基礎報酬は、約20年間増額されておらず、昨今の物価高すら反映されていない。

また、弁護活動において重要な活動とされる身体拘束からの解放については、成果が上がらなければ報酬は発生せず、成果を上げたとしても報酬が発生しなかったり、その金額は極めて低廉な額に抑えられていたりするという問題がある。例えば、被疑者の勾留決定に対する準抗告の申立てについては、勾留決定の取消し及び被疑者の釈放という成果が上がらなければ報酬は発生しない。接見等禁止に対する準抗告等の申立てについては、これが認容されたとしても報酬は発生しない。保釈請求については、保釈決定及び被告人の釈放がされた場合、報酬として1万円が支給されるが、保釈請求のために必要な証拠の収集及び書面作成の労力に比して、極めて低廉な額である。

当会の実情としても、2024年(令和6年)3月から、女性の被疑者等の留置施設が郡山北警察署に集約され、郡山支部以外の弁護人のほとんどが、移動時間に片道1時間以上費やすこととなり、女性の被疑者等の接見に要する時間が大幅に増加している。また、匿名・流動型犯罪グループによる事件など、多数の共犯者が存在する場合、利益相反等の都合により、管轄外の支部の弁護人を選任せざるを得ない事案も増加している。さらに、福島県では、裁判員裁判の公判手続が福島地方裁判所本庁及び郡山支部のみであるため、他支部の弁護人が選任された場合、公判期日に出頭するために、遠距離移動の必要がある。

当会の会員(192名)は、支部所在地に分散している(福島支部48人、郡山支部66人、白河支部11人、会津若松支部14人、いわき支部43人、相馬支部10人(本年1月1日時点))ため、支部を越えた遠距離移動は、多くの会員に多大な負担を強いている。

当会の会員数は、2018年(平成30年)には203名であったが、減少傾向にある。国選弁護の担い手が減れば、その分、弁護士一人当たりの負担も増えることが想定される。負担に見合った報酬体系が実現されなければ、さらに担い手が減り続け、国選弁護制度自体を維持できないおそれもある。

また、近時、佐賀県警察科学捜査研究所の職員によるDNA鑑定で不正行為が発覚したが、本来、捜査機関側の鑑定の信用性を争うべき事案は多く、数々の冤罪事件でも弁護側の科学的鑑定が無罪主張の柱となってきた。しかし、現行の国選弁護費用体系では、当事者鑑定の費用をはじめ、本来行われるべき多くの弁護活動の費用が賄われず、極めて不公平なものとなっている。その結果、証拠開示が不十分な中で人質司法に抗し、冤罪防止や更生支援等に鋭意努めるべき国選弁護人の活動が相当制約されているのである。

そもそも、国選弁護業務のための予算は160億円前後と極めて僅少な額で推移している。膨張を続ける100兆円規模の国家予算に占める割合も年々低下しており、人権保障の経済的基盤の拡充は立ち遅れているという他ない。

よって、当会は、被疑者等の更なる権利擁護と公正な刑事司法制度実現のため、国会、法務省、財務省等に対し、国選弁護制度の基礎報酬及び各種弁護費用の抜本的改善を求める。

2026年(令和8年)3月3日

福島県弁護士会
会 長 三 瓶  正

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