法制審議会刑事法(再審関係)部会の審議の進め方に抗議し、議員立法による再審法改正の実現を求める会長声明
1 再審法改正に関しては、昨年6月18日、衆議院に「刑事訴訟法の一部を改正する法律案」(以下「議員立法案」という。)が提出され、現在、継続審議となっているが、この間、法務大臣の諮問を受けて、法制審議会刑事法(再審関係)部会(以下「再審部会」という。)でも審議が進められている。
2 ところで、昨年12月16日に開催された再審部会第13回会議では、「今後の議論のための検討資料」(以下「検討資料」という。)が示された。これは、法務省事務当局が作成した資料であるが、再審部会での審議状況を忠実に整理・反映したものとはいえず、しかも再審部会の委員・幹事への事前の提示や意見聴取を経ることもなく、「意見の集約に向けたたたき台(案)」との標題で先に報道機関に配布され、記者に対する説明も行われていた。
このように、検討資料は、議事運営を補佐すべき立場に過ぎない法務省事務当局が、意見集約の方向性を示唆する内容で論点の抽出・整理を行った上で、その内容を再審部会の委員・幹事に先んじて報道機関に公表することによって、これを既成事実化し、それに沿った方向に再審部会の審議を誘導しようとするものと言わざるを得ない。また、検討資料の内容を見ても、裁判所が再審請求書やその添付資料等を調査し、再審の請求が理由のないものであると認めるときは、証拠開示や事実の取調べをすることなく、書面審理のみで直ちに再審請求を棄却することを義務づける案を明記するなど、えん罪被害者の速やかな救済を指向するものとは言い難く、議員立法案の水準にも達していない不十分なものである。過去のえん罪事件を見ても、再審請求を行った最初の段階で提出した新証拠のみで再審開始・再審無罪に至ることはなく、再審請求後に新たに開示された証拠等が無罪を言い渡すべき新規かつ明白な証拠となって、再審開始・再審無罪を導くことが多いことは言うまでもない。
3 再審部会を含め、法制審議会の刑事法関連部会の事務局は、法務省刑事局が務めているが、その要職は検察官が占めている。そのため、再審部会については、かねてよりその公正性、中立性に疑問が呈されており、再審法改正を再審部会の審議に委ねていたのでは、その内容が骨抜きにされるとの指摘もなされていた。当会においても、昨年9月12日に発出した臨時国会での再審法改正の実現を求める会長声明において、その点を指摘していたが、今回の出来事は、まさにそのおそれが現実化したものといえる。
刑事法研究者、元裁判官、さらにはメディアからも、証拠開示や再審開始決定に対する検察官の不服申立ての禁止等の再審法改正の中核となる事項について、「再審部会の議論で示される多くの意見が研究者・法律実務家の多数意見とかけ離れている」、「このままではえん罪被害者のための改正内容につながらない」、「再審法改正の原点に返るべき」などといった深い懸念が相次いで示されており、再審部会での審議状況は再審法改正を求める国民の意思から乖離している。
4 よって、当会は、再審部会に対し、えん罪被害者の速やかな救済の実現という再審法改正の原点に立ち返り、再審制度に関する専門的知見や再審事件の実情を踏まえた公正中立な審議を行うよう求めるとともに、国会に対しては、速やかに議員立法案を審議、可決するよう強く求めるものである。
2026年(令和8年)1月19日
福島県弁護士会
会長 三 瓶 正