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最低賃金の大幅な引上げと全国一律最低賃金制度の実施を求める会長声明

最低賃金の大幅な引上げと全国一律最低賃金制度の実施を求める会長声明

 長期に及ぶ新型コロナウイルスの感染状況の継続とロシアのウクライナ侵攻のなかで、食料品や光熱費など生活関連品の価格が急上昇している状況である。最低賃金法は、「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」(憲法25条)及び「労働条件は、労働者が人たるに値する生活を営むための必要を充たすべきもの」(労働基準法1条)であることを保障する意義を有するものであり、低所得者層の生活により大きく影響する物価高騰下において、ナショナルミニマムを画する最低賃金制度の果たす役割は大きい。労働者の生活を守り、経済を活性化させるためには、大企業だけでなくすべての労働者の実質賃金の維持又は上昇が実現される必要があり、そのためにはまず最低賃金額を大きく引き上げることが何よりも重要である。
 福島県地域別最低賃金は時給858円(令和4年(2022年))であり、10年前(平成24年(2012年))の時給664円から、194円(年平均19.4円)上がっている。しかし、たとえば1日8時間、月160時間従業したとしても、名目で月13万7000円にすぎず、所得税や社会保険料の負担を考慮すればナショナルミニマムとしての本来の役割を果たせているとは言い難い。
 また、最低賃金の地域間格差が依然として大きく、格差が是正していないことは重大な問題である。2022年の最低賃金は、最も高い東京都で時給1072円であるのに対し、福島県は時給858円で、214円の開きがある。2012年は東京都850円、福島県664円で、格差は186円であったが、この10年で格差がより拡大したと言える。最低賃金の高低と人口の転入出には強い相関関係があり、最低賃金の低い地方の経済の停滞要因ともなっている。都市部への労働力の集中を緩和し、地域に労働力を確保することは、地域経済の活性化のみならず、都市部での一極集中から来る様々なリスクを分散する上でも極めて有効である。
 ところで、地域別最低賃金を決定する際の考慮要素とされる労働者の生計費は、近時の調査によれば、都市部と地方の間で、ほとんど差がないことが明らかになっている。これは、地方では、都市部に比べて住居費が低廉であるものの、公共交通機関の利用が制限されるため、通勤その他の社会生活を営むために自動車の保有を余儀なくされることが背景にある。そもそも、最低賃金は、「健康で文化的な最低限度の生活」を営むために必要な最低生計費を下回ることは許されない。労働者の最低生計費に地域間格差がほとんど存在しない以上、全国一律最低賃金制度を実現すべきである。
 本年4月6日、厚生労働省の中央最低賃金審議会において、「目安制度のあり方に関する全員協議会」の取りまとめとして、同審議会が例年答申する地域別最低賃金額改定の目安について、ランク分けをA~Dの4ランクからA~Cの3ランクにすべき旨報告されたが、これでは地域間格差の抜本是正にはほど遠い。中央最低賃金審議会は、現行の目安制度が地域間格差の拡大をもたらしてきた現状を直視し、目安制度に変わる抜本的改正策として、全国一律制実現に向けた提言をなすべきである。
 最低賃金引上げに伴う中小企業への支援策について、現在、国は「業務改善助成金」制度により、影響を受ける中小企業に対する支援を実施している。しかし、利用件数はいまだ少数である。我が国の経済を支えている中小企業が、最低賃金を引き上げても円滑に企業運営を行えるように充分な支援策を講じることが必要である。具体的には、公租公課や社会保険料の事業主負担部分を免除・軽減すること、賃上げ部分に応じて各種補助金制度を設けること、原材料費等の価格上昇を取引にきちんと反映することを可能にするように法規制することなどの支援策が有効であると考えられる。
 最低賃金の引上げには地域経済を活性化させる効果がある。当会は、引き続き国に対し中小企業への充分な支援策を求めるとともに、中央最低賃金審議会及び福島地方最低賃金審議会に対し、福島県地域別最低賃金の大幅な引上げを求め、また、中央最低賃金審議会に対し、地域間格差の抜本是正のため、全国一律の最低賃金の確立を目指し、全国全ての地域において最低賃金大幅引上げと地域間格差の大幅縮小を実現する答申を行うべきことを求めるものである。

2023年(令和5年)6月14日
福島県弁護士会
会長  町田 敦

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