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共謀罪の新設に反対する会長声明

衆議院の解散により廃案となった「犯罪の国際化及び組織化並びに情報処理の高度化に対処するための刑法等の一部を改正する法律案」(以下「本法案」という)が何らの手直しもされることなく再上程され、現在の特別国会中に成立されようとしている。

本法案において、「共謀罪」(改正刑法案第6条の2)の新設がなされようとしているが、共謀罪は以下のとおり、重大かつ人権上看過出来ない深刻な問題をはらんでいるものである。

1. 共謀罪とは、「長期4年以上の刑を定める罪に当たる行為」について、「団体の活動として」「当該行為を実行するための組織により行われるものの遂行を」「共謀した者」を、前提犯罪の軽重に従って「5年以下、または2年以下の懲役」に処するというものである。

2. ここに「共謀」とは、犯罪を共同で遂行しようという意思を合致させる謀議、あるいは謀議の結果として成立した合意を言うとされる。従って、共謀罪は、犯罪の実行に着手することはおろか、何らの準備行為をすることも必要なく、単なる犯罪の合意を処罰するもので、客観的な行為があって初めて犯罪が成立するという、我が国刑法の大原則に反するものである。

現行法上、共謀と類似する「陰謀」を罰しているのは、内乱、外患誘致罪等の極めて特殊な犯罪について、8種に限定されている。

これに対し、本法案では、共謀罪の適用罪種が615種となり、通常の刑法犯罪について広範囲に「共謀」をもって処罰しようとするものである。

さらに、共謀という概念自体が曖昧なものであり、思想自体を処罰する恐れが大きく、思想信条の自由、表現の自由、集会・結社の自由など、憲法上の基本的人権が重大な脅威にさらされることになりかねない。

共謀罪では、会話や電話、メール等の内容が犯罪を構成することになり、その内容を察知するため盗聴などの捜査が行われ、合意を立証するため自白偏重を招く危険性もある。

3. 次に、「団体活動として」とのみ規定されており、そもそも国連条約が取り締まりの対象として予定していた越境性=国際性や、組織的犯罪集団による行為を要件としていない。その結果、共謀罪が成立し、国内法化されると、町内会やNPOなどの一般市民団体、企業や労働組合の活動さえもその対象とされ、共謀罪を根拠にこれら団体に捜査の網がかぶせられることとなるものである。

4. さらに、本法案は、共謀罪に関し、実行着手前の自首に刑の減免を認めている。このため、捜査機関がおとりを送り込み当該団体の意思形成をあおったうえ、おとり自身が自首をして減免され、その団体の構成員を罪に陥れるという結果さえ生じ得るものである。このことは、市民の中におとりがいるかもしれないという疑心暗鬼を生じさせ、表現の自由を中心とする市民活動に、深刻な萎縮効果を招きかねないものである。

5. このように、共謀罪は、基本的人権を侵害し、監視社会を招くなど、市民生活にとって重大な脅威となるものであり、当会は、その新設に強く反対するものである。

2005年(平成17年)10月13日
福島県弁護士会
会長 宮本多可夫

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