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生活保護基準引下げによる就学援助制度への影響を阻止するための実効的措置を講じることを求める会長声明

生活保護基準引下げによる就学援助制度への影響を阻止するための実効的措置を講じることを求める会長声明

  本年6月9日、文部科学省は、平成25年8月の生活保護基準引下げによって、準要保護者(生活保護利用者に準じる生活困窮者)に対する就学援助の認定基準の運用等がいかなる影響を受けているかを調査し、その結果を発表した(平成26年度における就学援助実施状況調査(一部前倒し調査)結果(速報版))。

その結果、調査自治体数1768自治体のうち1697自治体(96%)が、認定基準の据え置き等何らかの対応を講じたことによって生活保護基準の見直しに伴う就学援助制度への影響が調査時点において生じていなかった一方で、就学援助制度への影響に対して直接的に対応していない自治体が71自治体(4.0%)あり、福島県の6自治体が未対応であることが判明した。

就学援助制度は学校教育法19条に直接の根拠を置き、生存権(憲法25条)、教育を受ける権利(同26条)、平等権(同14条)及び教育基本法にもとづく教育の機会均等(法4条)にその根幹が求められ、将来の担い手である子どもの教育を受ける権利が保護者の経済状況によって左右されることがないよう、市町村は必要な援助を行うことが求められている。

準要保護者に対する就学援助制度については、国庫補助が平成17年に廃止されて一般財源化されたことにより、その認定基準及び具体的な支給内容については各自治体の裁量に委ねられている。しかしながら、子どもが教育を受ける権利の保障は、その重要性に鑑み、万全であるべきことはいうまでもなく、本来、自治体の財政状況や政策によって左右されることがあってはならないものである。

特に福島県においては、原発事故によって避難を余儀なくされたことによる不安、県外避難による子どもの数の減少、放射能汚染による学校生活の混乱等によって、本来あるべき姿での学習環境が損なわれている現状があり、福島県下で暮らす子ども達に安心して生活し学べる環境を提供することは急務となっている。

就学援助認定基準への影響に未対応の福島県6自治体は、就学援助制度以外の取組によって経済的に困窮している児童生徒に対する取り組みを実施していると回答しているが(前出調査結果)、その内容は医療費助成による支援や経済的支援についての情報提供等に止まり、就学援助の意義に照らして甚だ不十分であると言わざるをえない。

また、生活保護基準額に一定の係数を乗じることで就学援助基準額を設定している自治体も多く(1203自治体、68.0%)、来年度、再来年度には生活保護基準の引下げによる影響が就学援助認定基準に及び、何らかの対応をしない限り就学援助対象者の絞り込み等の弊害が生じることは明白である。

当会においては、平成24年12月21日付「生活保護基準の引下げと受給抑制に繋がる政策に反対する会長声明」を発するなど、そもそもの原因である生活保護基準の引下げに強く反対してきたものであるが、今般の生活保護基準引下げによる就学援助基準への影響については、当該会長声明においてすでに指摘していた懸念が現実化したものといえる。

そこで、当会は、国及び県内の地方公共団体に対し、以下の事項を強く求める。

1 国に対し、そもそもの原因である生活保護基準の引下げを撤回すること、生活保護基準の引下げ撤回までの間、生活保護基準引下げが就学援助認定基準に影響しないよう実効的な措置を講ずること、及び就学援助制度の運用を自治体に全て委ねるのではなく国としての就学援助制度を再構築することを求める。

2 生活保護基準引下げによる就学援助基準への影響に対して未対応の6自治体を含む福島県内全市町村に対し、生活保護基準引下げに連動して就学援助制度が縮小することのないよう、生活保護基準と就学援助認定基準を切り離した運用を行うことや就学援助制度充実のための実効的措置を講ずることを求める。

 

2014年(平成26年)7月18日

 福島県弁護士会

会 長   笠  間  善  裕

 

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