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避難者の就労不能損害の賠償にかかる継続的な賠償を求める会長声明

避難者の就労不能損害の賠償にかかる継続的な賠償を求める会長声明

 東京電力株式会社(以下「東京電力」という。)は,東京電力福島第一原子力発電所事故(以下「本件事故」という。)の被害者に対する損害賠償に関して,2014年(平成26年)2月24日,「平成26年3月以降の就労不能損害に係る賠償及び避難指示解除後のご帰還にともなう就労不能損害に係る賠償のお取り扱いについて」として,避難者に対する就労不能損害の賠償についての方針を公表した。

 これによれば,東京電力は,①平成26年3月以降の就労不能損害について,同月1日から平成27年2月28日までの12ヶ月間を上限として賠償を行うことを原則とし,②避難指示解除後相当期間内に本件事故前の居住地に帰還し,帰還にともなう就労環境の変化による就労不能損害が生じた場合について,12ヶ月間を上限として賠償を行う,③支払われる賠償金額については,平成26年2月までで,いわゆる「特別の努力」の適用を終了する,とのことである。

 しかし,このような対応は,被害者の個別事情を無視して一律に上限(賠償終期)を決め,原則として就労不能損害の賠償を事実上打ち切るもので,著しく不当なものである。

 まず,本件事故により,避難を強いられている被害者が再就職等によって従前と同様の収入を確保することが出来るかどうかは,個々の避難者の能力,条件,生活環境等に左右されるものであって,一律に賠償終期を決めることは,何の落ち度もなく避難を強制された被害者に対して,意に沿わぬ職種,条件での再就職を強いることに等しい。また,原子力損害賠償紛争審査会(以下「原賠審」という。)がこれまで示してきた賠償に関する指針においては,就労不能損害の終期について定めず,個別具体的な事情に基づいて合理的に判断することを求めていることにも反するものである。

さらに,賠償期間を避難指示解除後1年に限定することは,避難者に対して,避難者の意に沿わなくても,避難解除後1年以内の帰還を事実上強制するに等しい。未だ地域の復興途上にある中,帰還した避難者の就労不能や減収が相当長期にわたって続くことは容易に想像でき,これらに対する賠償を原則1年で打ち切るとするのは,あまりに被害の実情を軽視するものである。

 加えて,一方的に「特別な努力」の適用を打ち切る対応も,避難者の生活基盤を揺るがすことにつながりかねない。

 以上,今回の東京電力の対応は,原賠審すら明示していない賠償の終期を加害者である東京電力が明示するもので何の落ち度もなく突如生活基盤を奪われた被害者の被害の実情を無視し,一方的に賠償を打ち切ろうとするものに等しく,決して許されるものではない

 よって,当会は,東京電力に対し,避難者に対する就労不能損害の賠償について,原賠審の指針に従い,個別の事情を十分に考慮し,帰還するか否かにかかわらず,また,終期を定めることなく,合理的な事情のある就労不能損害についての賠償の継続を強く求める。

 

2014(平成26)年3月18日

福島県弁護士会会長 小池 達哉

【執行先】

東京電力,経産省,文科省,原賠審,原子力損害賠償紛争解決センター,県内選出国会議員

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