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新型コロナウイルス感染症対策のための特別定額給付金の受給権を個人に認めることを求める会長声明

 2020年(令和2年)4月20日に閣議決定された「新型コロナウイルス感染症緊急経済対策」の一環として支給されることとなった「特別定額給付金」(以下,「本件給付金」という。)は,給付対象者を基準日(2020年(令和2年)4月27日)に住民基本台帳に記録されている者,受給権者を住民基本台帳に記録されている者の属する世帯主と定めるもので,世帯主以外の給付対象者個人に受給権を認めないものであった。

 その後,同月22日付事務連絡により,配偶者からの暴力を理由として避難し,配偶者と生計を別にしている者について,保護命令を受けるなど,行政等に申告している等の一定の要件を満たし,その旨を申し出た場合,世帯主でなくとも,同伴者の分を含めて本件給付金を受け取ることができることになった。もっとも,配偶者から暴力を受けている者の中には避難ができない者,暴力を受けていることを行政等に申告できない者が存在し,これらの者に対し確実に本件給付金が行き渡るか大いに懸念される。また,配偶者からの暴力のみならず,家庭内で虐待を受けている者に対し確実に本件給付金が行き渡るかについても大いに懸念される。

 さらに,福島県には,東京電力福島第一原子力発電所事故の影響によって県内に住民票を残したまま,未だ県内外に避難を強いられている住民がいるが,このような避難者に対してどのように本件給付金を支給するかは未だ明らかになっていない。避難中に家族分離するなど家族関係に変化があっても,住民票に変動がないために住民票上の世帯主に支給されるとすれば,やはり必要な個人に本件給付金が行き渡らない可能性が高い。

 上記の問題は,本件給付金の受給権を個人ではなく世帯主とすることに起因するものである。そのため,家庭内で暴力を受けるなど困難な状況にある個人を制度上例外扱いし,一定の要件を課し,手続の負担を強いる結果となっている。

 新型コロナウイルス感染症の感染拡大による影響は個人毎に生じるものである。また,当然のことながら,その影響は個人の置かれている状況により様々である。

 給付対象者は本件給付金支給にあたって支給額を決定するための数としてではなく,個別具体的な困難を抱えている個人として扱われなければならない。

 これまでの災害においても,被災者生活再建支援金や各種義援金が世帯毎に支払われた結果支援金や義援金が世帯内における個人の意思意向が反映されない形で利用される事態も起こった。東京電力福島第一原子力発電所の事故の際の賠償金についても,世帯ごとの支払いを原則としたために,同様の事態が起こっている。

 したがって,緊急時下において,本件給付金の必要な者に確実にかつ早急に支給され,また,支給に関して無用な争い,分断等を生じさせないようにするため給付対象者たる個人が受給権を有するような制度設計をなすべきである。

 新型コロナウイルス感染症の感染拡大による影響はいつどのような形で終息するのかわからない状況であり,今後も同様の給付金の支給が必要な事態も想定される。

 本会は国に対し,本件給付金支給にあたり,給付対象者個人に受給権を認める制度設計をなすよう強く求める。

 

2020年(令和2年)5月1日

福島県弁護士会

会長  槇   裕 康

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