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福島第一原子力発電所事故被害の完全救済及び脱原発を求める声明

福島第一原子力発電所事故(以下「本件事故」という。)は,福島県内に広く深刻な被害を及ぼした。福島県では,未だ約15万人の県民が県内外への避難を強いられるなど,本件事故前の「普通の生活」を根こそぎ奪い取られている。また,未だ県民の多くが,放射能汚染に対する不安を抱え,深刻な風評被害等に脅かされている。このように,近代日本最大の人権侵害の1つといっても過言ではない甚大な被害を生じさせた本件事故の責任は,決して東京電力株式会社(以下「東京電力」という。)だけにとどまるものではない。原子力政策を推進してきた国も,その責任を免れることはできず,国及び東京電力は,本件事故前の「普通の生活」を可及的速やかに回復させるため,すでに発生した被害はもちろん,今後明らかになる被害についても,完全かつ迅速に救済しなければならない。

しかるに,東京電力の行う賠償手続は何通もの請求書類が必要になる等煩雑であり,また,原子力損害賠償紛争解決センター(以下「原紛センター」という。)の和解仲介手続における東京電力の対応は,被害の実態を無視した極めて形式的かつ硬直的なものに止まっている。さらに,被害者が希望する除染作業も遅々として進まず,本件事故の原因及び収束の目処さえ明確になっていないにもかかわらず,国は原子力発電所再稼働へ向けた手続を進めている。

このような現状を見たとき,表向きは「福島の復興」が唱えられているものの,実際には,本件事故が風化し,国と東京電力の加害責任も忘れられ,被害者が置き去りにされていく危惧を感じざるを得ない。

当会は,これまでも,本件事故による被害の救済,環境回復,原子力発電所の廃止及び被害者の生活再建等を求めてきたところであるが,このような危惧感から,福島の真の復興への礎を築くべく,本日,被害自治体の首長等を招き,原発事故被害者支援活動に関するシンポジウムを開催した。

そこであらためて浮き彫りになった被害者及び地域の現状を踏まえ,被害の回復と地域の再生へ向け,国に対し,重ねて以下の点を提言すると共に,その実行を強く要請するものである。

1. 本件事故による損害について,その実態を見据えた十分な賠償を,被害者に負担をかけない簡便な方法で速やかに実施すると共に,原紛センターの提示した和解案を拒否することのないよう,東京電力に対し強く指導すること。

2. 汚染水の漏えい対策に止まらず,本件事故の収束と廃炉に向けた作業全般につき,予算の確保並びに作業計画の立案に自ら直接関与し,かつ,東京電力による具体的な作業を厳しく監視すると共に,その進捗状況を,自ら逐一,国民に公表すること。

3. 本件事故の損害賠償請求権については,民法の3年の短期消滅時効・20年の除斥期間のいずれも適用せず,遅くとも今年12月までに特別立法措置を講ずること。

4.「東京電力原子力事故により被災した子どもをはじめとする住民等の生活を守り支えるための被災者の生活支援等に関する施策の推進に関する法律」の趣旨に則って,一般公衆の被ばく限度量である年間1ミリシーベルトを超える地域はもとより,福島県の全域を「支援対象地域」として指定し,生活の復興に向けた必要な支援を実施すること。

5. 被害者に対し,血液検査,尿検査,ホールボディーカウンター検査等をはじめ多角的な検査を無償で受ける機会を保障し,検査結果は被害者に全て直接開示するとともに,本件事故の健康影響を長期的に調査・研究し,十分な医療を保障する体制を整えること。

6. 我が国の原子力推進政策を抜本的に見直し,全ての原子力発電所を廃止させ,原子力発電と核燃料サイクルから撤退し,自然エネルギーを基本とするエネルギー政策へと速やかに転換すること。

以上

2013年(平成25年)9月7日
福島県弁護士会
会長 小池 達哉

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