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新型コロナウイルス感染症対策のための特別定額給付金(仮称)の給付に際し,差押禁止債権化等の措置を求める会長声明

日本国内において,新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が拡大傾向を見せており,本年4月7日に東京都など7都府県を対象とする新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づく緊急事態宣言がなされ,続いて同月16日には,緊急事態宣言の対象が全国に拡大されている。これに伴い,各都道府県において,不要不急の外出の自粛要請や各種の事業所に対する休業要請がなされている。事業所の閉鎖や一時休業が相次いでおり,国民生活や経済に与える影響も懸念されている。

このような中,同月20日に「新型コロナウイルス感染症緊急経済対策」が閣議決定され,その一環として,家計支援のための「特別定額給付金(仮称)」として,住民基本台帳に記録されている者1人あたり10万円の特別定額給付金(以下,「本件給付金」という。)が支給されることとなった。新型コロナウイルス感染症の拡大を防止するために,外出や営業を自粛することに伴い,多くの国民の収入が低下しており,また,対策用のマスクや消毒薬等の調達の家計支出も増加していることから,家計の支援策として,本件給付金の実現は意義があるものと評価できる。

本件給付金の趣旨・目的は,「感染拡大防止に留意しつつ,簡素な仕組みで迅速かつ的確に家計への支援を行う」ことにあるとされており(総務省HP),自然災害に匹敵する性質を有する感染症の拡大防止に伴う家計収支の悪化や家計支出の増大等を考慮した家計支援にあると考えられる。

自然災害時には,被災者に対して自治体を通じて災害義援金が支給されるが,特に東日本大震災のような大規模災害時には,義援金について差押禁止債権とする旨の特別立法がなされ,また,生活保護世帯については,義援金のうち一定額を包括的に収入認定の対象から除外する旨の厚生労働省の通知が発せられるなどして,義援金が,被災者の生活再建支援という本来の趣旨に適切に利用されるための配慮がなされる例が多い。

今回の新型コロナウイルス感染症の拡大は,国民に突如として襲いかかり,その生命・身体に重大な危険をもたらす点において自然災害と類似するものであり,本件給付金は,新型コロナウイルス感染症のまん延という「災害」に襲われ,収入の減少や支出の増大などに見舞われた国民に対して,一律に家計と生活を支援することがその目的であると考えられる。したがって,本件給付金についても,大規模災害時の義援金と同様に,差押禁止債権とし,また生活保護世帯について包括的に収入認定の対象から除外する措置をとるなどして,特に低所得者層について,本件給付金が生活の維持等のために有効に利用されることを確保すべき要請はきわめて大きい。厚生労働省は,生活保護受給世帯への本件給付金については「趣旨・目的に鑑み,収入として認定しない取り扱いとする方針」のようであるが,この方針について正式な通知にし,全国の生活保護実施機関に周知徹底を図る必要がある。この点,東日本大震災時には,厚生労働省が2011年(平成23年)5月2日付「東日本大震災による被災者の生活保護の取扱いについて(その3)」において,「第1次義援金…については,当座の生活基盤の回復に充てられると考えられること…にかんがみ,…包括的に一定額を自立更生に充てられるものとして…差し支えない」として,義援金のうち一定額を包括的に収入認定から除外してよい旨を通知していたものの,被災地の自治体にその趣旨が十分に徹底されず,義援金が収入と認定されて生活保護が停廃止されるなどの混乱が生じたこともある。したがって,本件給付金の生活保護における取扱いについての通知は,かかる混乱を招かないよう,「特別定額給付金は,その趣旨性質から収入認定しないこと」など明確なものにするとともに,全国の保護実施機関に対し,もれなく周知徹底を図るべきである。

したがって,本会は,国に対し,「新型コロナウイルス感染症緊急経済対策」の一環としての特別定額給付金(仮称)について,差押禁止債権とする旨の特別立法を行うこと及び生活保護世帯について特別定額給付金(仮称)の全額を包括的に収入認定の対象から除外する旨の厚生労働省の通知を発出することを強く求めるものである。

 

2020年(令和2年)4月27日

福島県弁護士会

会長  槇   裕 康

 

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