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憲法改正国民投票法の抜本改正をすることなく 憲法改正手続を行うことに反対する声明

自民党の憲法改正推進本部は、今年3月22日の全体会合で、憲法9条の改正案について本部長一任を取り付け、憲法改正への歩を進めた。自民党が想定した憲法改正のスケジュールは、今通常国会で衆参両院の憲法調査会に自民党案を示して議論し、秋の臨時国会で憲法改正案の国会発議をして国民投票を行うというように報道がなされている。

この国民投票については、2007年(平成19年)に制定された日本国憲法の改正手続に関する法律(以下「憲法改正国民投票法」という)によってなされるが、当会はこの憲法改正国民投票法が制定される前に、憲法改正国民投票法案に反対する旨の会長声明を発出した(2007年(平成19年)1月31日「憲法改正手続・国民投票に関する与党案・民主党案に反対する声明」)。すなわち、前記声明は、憲法改正手続における国民投票は、国の最高法規である憲法について主権者である国民の意思を最終的に表すものであるから、国民自身が自由な意思を形成し、判断できるよう十分な情報が適正・公平に提供され、不当な干渉がない中で、広範な国民によって広く活発な議論がなされることが求められるが、当時の憲法改正国民投票法案は、中でも公務員と教育者に対する国民投票運動に対する制約、憲法改正案の広報に関する事務の不備への懸念、発議後投票までの期間が短すぎること、国民投票にあたっての最低投票率の定めがないこと等、国民の十分な議論を阻害する多数の問題点があることを指摘したものである。

しかるに、現行の憲法改正国民投票法は、上記の問題点を解消しないまま制定され、2010年(平成22年)5月から施行されるに至った。このため、現在国民投票を実施した場合、例えば、投票率が40%だった場合、憲法改正は有権者の20%超の賛成で足りることになってしまう。このようなごく少数の有権者の賛成で憲法改正が可能ということになれば、最高法規である憲法の正当性や信頼性が失われかねない。このため、憲法改正国民投票法の制定にあたって、参議院では前記の問題点を含む18項目に及ぶ附帯決議を行い、立法府自らが国民投票法に数多くの問題があることを指摘した。それにもかかわらず、前記の問題点はほとんどすべてが放置されたまま現在に至る中で、憲法改正論議だけが先行することに当会は重大な懸念を抱かざるを得ない。

当会は、本日の憲法記念日にあたって、主権者である国民の総意を表すものとは言えない現在の憲法改正国民投票法のもとで憲法改正手続を行うことに強く反対するとともに、附帯決議において指摘された項目を含む憲法改正国民投票法の問題点の抜本的な再検討を求めるものである。

2018年(平成30年)5月3日
福島県弁護士会
会長 澤井 功

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