最高裁判決を受けた厚生労働省の対応策としての告示の撤回及び生活保護利用者に対する全面的な補償措置を求める会長声明
最高裁判決を受けた厚生労働省の対応策としての告示の撤回及び生活保護利用者に
対する全面的な補償措置を求める会長声明
1 2025年6月27日、最高裁判所第三小法廷は、2013年8月から3回に分けて実施された生活扶助基準の引下げ(以下「本引下げ」という。)に係る保護費減額処分の取消し等を求めた訴訟の上告審において、本引下げの違法性を認め、保護費減額処分を取り消す判決(以下「本判決」という。)を言い渡した。
これを受けて、厚生労働省は、2025年11月21日、「最高裁判決への対応に関する専門委員会報告書等を踏まえた対応の方向性」(以下「本対応策」という。)を公表し、同年12月16日、本対応策を含む補正予算が成立し、2026年2月20日、本対応策を受けた形で告示が発出された(令和8年厚生労働省告示第43号、以下「本告示」という。)。
本告示の概要は、次のとおりである。
第一に、生活保護の生活扶助基準が低所得世帯の消費実態と乖離している部分に関する調整(いわゆる「ゆがみ調整」。かかる調整は本判決でも違法とされていない。)については、再実施する。
第二に、物価の下落のみを理由として生活扶助基準を引き下げる調整(いわゆる「デフレ調整」。かかる調整は本判決で違法とされた。)に代えて、低所得者の消費実態との比較により新たに-2.49%の水準調整を行う。
第三に、本判決の原告になった者についてのみ、第二の減額分を填補する特別給付を行う。
2 しかし、このような本告示には、次の点で問題が大きいと言わざるを得ない。
(1)事後的に不利益変更を行うものであること
まず、上記訴訟の原告らについては、保護費減額処分の取消しにより、本引下げ前の基準による生活保護費との差額の給付請求権が法律上生じているにもかかわらず、本告示は、本来給付を受けるべき金額を減額し、事後的に不利益変更を行うものであるから、生存権(憲法第25条第1項)に由来する財産権(憲法第29条第1項)を侵害するものである。
(2)三権分立に反すること
前項のような事後的な不利益変更は、要は、確定した最高裁判所判決にしたがった給付を行わない旨を厚生労働省が明らかにしたという側面が否定できないところ、このような行政判断を実施することは最高裁判所による確定した司法判断を軽視するものであって、日本の法治主義、三権分立を瓦解させることにつながりかねないから、到底容認できない。
(3)無差別平等原理に反すること
本判決の理由となった基準引き下げの違法は原告となっていない生活保護利用者において同様のものであるから、本告示は本判決の原告のみに追加給付をするという点で、無差別平等原理(生活保護法第2条、憲法第14条1項)に反する。
3 結語
以上のとおり、本告示には看過しがたい問題点が明らかであると言わざるを得ない。当会は、国及び厚生労働大臣に対し、本告示を撤回し、全ての生活保護利用者に対する全面的な補償措置を直ちに実施することを改めて求める。
2026年(令和8年)4月27日
福島県弁護士会
会長 渡辺 慎太郎