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臨時国会での再審法改正の実現を求める会長声明

臨時国会での再審法改正の実現を求める会長声明

1 当会では、2023年(令和5年)3月14日に再審法の改正を求める会長声明を発出し、同年11月25日開催の臨時総会において「再審法の速やかな改正を求める決議」を採択した。また、2024年(令和6年)9月26日に静岡地方裁判所においていわゆる「袴田事件」の再審無罪判決が出されたことを受けて、同年9月26日、「『袴田事件』の再審無罪判決を受けて、検察官に対し上訴権の放棄を求めると共に、改めて再審法の速やかな改正を求める会長声明」を発出した。更には、同年10月23日に名古屋高等裁判所金沢支部においていわゆる「福井女子中学生殺人事件」の第2次再審請求事件について、再審開始決定が出されたことを受けて、同年12月10日、「『福井女子中学生殺人事件』の再審開始決定確定を受けて、改めて再審法の速やかな改正を求める会長声明」を発出した。
このように、当会は、国に対し、再審法改正を実現するように求め続けてきた。
2 2025年(令和7年)6月18日、衆議院に「刑事訴訟法の一部を改正する法律案」(以下「本法案」という。)が提出され、その後、衆議院法務委員会に付託されて、閉会中審査となっている。
本法案は、再審制度によってえん罪の被害者を適正かつ迅速に救済し、その基本的人権の保障を全うするという観点から、①再審請求審における検察官保管証拠等の開示命令、②再審開始決定に対する検察官の不服申立ての禁止、③再審請求審等における裁判官の除斥及び忌避、④再審請求審における手続規定を定めるものである。これは、当会がこれまで求めてきた再審法改正の内容と軌を一にするものであって、高く評価できる。
「えん罪被害者のための再審法改正を早期に実現する議員連盟」(以下「再審法改正議連」という。)は、2024年(令和6年)3月に発足して以来、全国会議員の半数を超える議員の参加を得て、えん罪被害者、最高裁判所、法務省、日本弁護士連合会等からのヒアリングを実施し、それを踏まえて改正項目や条文案を検討するなど、精力的な活動を重ねてきたものであり、今般、それが本法案として結実したものである。当会は、再審法改正議連をはじめとする関係各位のこの間の尽力に深い敬意を表する。
3 一方で、再審法改正に関しては、2025年(令和7年)4月21日以降、法制審議会刑事法(再審関係)部会(以下「法制審部会」という。)において審議が行われ、本法案の定める4項目も審議対象となっている。
しかし、上記4項目の改正について、検察官と密接な関係を有する法務省が事務局を務める法制審部会が主導的な役割を担うことについて、まず、強い懸念を表明せざるを得ない。
再審法改正は、何よりもえん罪被害者の速やかな救済に資するものでなければならない。そして、上記4項目は、数多くある論点の中でも、えん罪被害者の速やかな救済を実現する上で根幹をなすものであるから、これらの点については、早急に法改正がなされるべきである。
しかしながら、この間の法制審部会での審議では、「袴田事件」や「福井女子中学生殺人事件」などの著名えん罪事件を通じて明らかになった再審法の不備を指摘して法改正を求める意見がある一方で、再審手続における証拠開示の範囲を新証拠及びそれに基づく主張に関連する限度にとどめようとする意見や、再審開始決定に対する検察官の不服申立てを禁止することに消極的な意見も見受けられるところであり、これを受けて、事務局を務める法務省が原案を取りまとめる形で、上記4項目の改正に関する是非を含む全14項目に及ぶ論点が提示されている。法制審部会での早期の取りまとめを目指すとしても、その法案化までには相当な期間を要することは明らかであり、改正が速やかに進む目処は立っていないと言わざるを得ない。
4 このような状況に照らせば、まずは「国の唯一の立法機関」である国会において、速やかにあるべき再審法改正の方向性を示すことが重要である。そして、法制審部会では、その方向性に沿って、残された論点も含めて審議を尽くす役割を担うべきである。
5 そこで、当会は、国に対し、速やかに本法案の審議を進め、今秋にも予定されている臨時国会において本法案を可決・成立させることを求めると共に、法制審部会に対し、本法案の定める4項目を前提に、さらにそれを補完する方向での審議を進めることを求める。

2025年(令和7年)9月12日

福島県弁護士会

会長  三 瓶   正

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