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「テロ等準備罪(いわゆる共謀罪)」法案の成立に反対する会長声明

「テロ等準備罪(いわゆる共謀罪)」法案の成立に反対する会長声明

 1 いわゆる共謀罪法案をめぐっては,2003年(平成15年)から2009年(平成21年)までの間に計3回にわたって,国会へ提出されたが,その都度,廃案とされてきた。
過去に廃案となった共謀罪法案(以下,「旧法案」という。)は,「長期4年以上の刑を定める犯罪」について,「団体の活動として」「当該行為を実行するための組織により行われるものの遂行を」「共謀した者」を処罰する内容であった。
2 旧法案については,共謀罪の新設によって,約600を超える犯罪類型の処罰が可能となる結果,市民団体や労働組合などの活動が処罰対象となりうることや,具体的な実行行為はおろか,何らの準備行為もなく処罰する点で,近代刑法が人権保障のために,犯罪の意思を有するだけでは処罰しないとしてきた大原則に反するものであることなど,処罰の範囲も不明確かつ広範にわたり,人権侵害を招く危険性が極めて高い内容であった。
3 そのような経緯にもかかわらず,昨年より,政府は,近年頻発するテロ事件等への対策として,後に指摘するような旧法案の趣旨を引き継いだ「テロ等組織犯罪準備罪」を新設する法案(以下,「テロ等準備罪法案」という。)を国会に提出しようと検討している旨,続々と報じられるに至った。
テロ等準備罪法案は,昨年9月頃,国会提出の動きを見せたものの,野党のみならず与党内部からも慎重論が出るなど,その問題点を指摘する声は大きく,同月半ばには法案提出は見送られることとなった。
4 ところが,2017年(平成29年)3月21日,上記テロ等準備罪法案について政府は閣議決定を行い,同年4月6日,同法案は衆議院本会議で審議入りし,現在審議されている状況にある。
この点,政府は,テロ等準備罪の新設の必要性について,国連越境組織犯罪防止条約を批准するため必要であり,国内法として同罪の立法がなければ,条約の批准は不可能であって,既に多数の国が批准していることも考えると,新設を遅らせることで我が国が国際的な批判を浴びるとしている。また,公開された法案をみると,一見,新設する処罰対象犯罪の数を絞り,対象犯罪の要件について明確化を図る修正を盛り込むことで,旧法案の危険性を取り除いたかのように見える。
しかしながら,以下に指摘するように,テロ等準備罪法案は,旧法案と変わらない危険性を抱えていると考えられる。
5 まず,我が国で定められている刑罰法規においては,すでに重大な犯罪に対する予備や準備,陰謀等の処罰が十分に設けられていることから,条約への批准に必要な組織犯罪の防止にかかる環境は整っているものといえる。すなわち,当該条約を締結する必要性のために,新たにテロ等準備罪法案が予定する277もの処罰法規を整備することが必須とはいえず,今回の改正は,単に実行行為以前の行為の処罰範囲を大きく拡大するものであって,既遂行為を処罰するという刑法の基本原則を大きく改変し,処罰の拡大をもたらすものとなる。
また,テロ等準備罪法案における二人以上での「計画」とは,多人数間での犯罪の合意であり,まさに「共謀」と変わるところはない。その「準備行為」についても,「資金又は物品の手配,関係場所の下見その他の計画をした犯罪を実行するための準備行為」としたところで処罰範囲が明確になり,限定されているとは言い難いため,テロ等準備罪の成否の判断について捜査機関の恣意的な解釈・運用を限定する機能を十分に果たしているとは言い難い。そのため実質的には,「計画」の存在さえ認められれば,相当程度広範にわたる行為が「準備行為」として処罰される危険性が拭えない。
6 テロ等準備罪法案の内容が以上のようなものであることから,再三にわたって批判を受けてきた旧法案の問題点は払拭できていない。テロ等準備罪法案は,やはり処罰範囲が広範であり,明確性を欠いていると考えられ,国民の人権侵害をもたらす危険性は依然として高いといえる。

以上の理由から,当会は,このような新法案の成立に反対するものである。

2017年(平成29年)4月11日
福島県弁護士会
会 長  渡 邊 真 也

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