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原子力損害賠償紛争解決センターにおける和解仲介手続を全国各地、県内各地で実施することを求める会長声明

1. 2011年(平成23年)8月5日、文部科学省の原子力損害賠償紛争審査会は中間指針を発表するとともに、原子力発電所事故による損害賠償にかかる和解仲介の手続を実施する組織として「原子力損害賠償紛争解決センター」を設置する旨発表した。

原子力損害賠償紛争審査会が発表した中間指針は、損害賠償額を実際に算出する基準としては曖昧なものであり、また、避難対象区域外の住民らが自主的に避難した場合の費用など、損害賠償についての指針が未だ示されていない項目もあることから、今後、東京電力が本格的に損害賠償を実施していくとしても、被災者の請求を東京電力が認めない事案が多発することも想定される。このような場合、原子力損害賠償紛争解決センターによる和解仲介手続により、被災者に対して迅速かつ十分な損害賠償が行われることが期待される。

2. 原子力損害賠償紛争解決センターは、福島及び東京の二カ所に事務所を設置して和解仲介を実施するとの報道がなされており、福島県内では郡山市内に事務所を設置する準備が進められているようである。

しかし、原子力損害賠償紛争解決センターによる和解仲介手続が上記2カ所の事務所においてのみ実施されるだけでは、被災者に対する救済措置として極めて不十分である。

すなわち、今回の原子力発電所事故の被災者は、福島県内においてはもちろん、全国各地に広く避難しているのであり、仮に、郡山市及び東京都の二カ所のセンター事務所においてのみ和解仲介手続が実施されるにとどまるとすれば、センター事務所から遠方に避難している被災者にとっては、センターの和解仲介手続を利用することは事実上不可能なものと言わざるを得ない。

3. 特に福島県内の被災者の状況に関して、当会では、2011年(平成23年)3月29日以来、無料電話相談、避難所への出張無料相談、避難所近辺の拠点における無料相談等を実施してきた。

上記相談のうち、原子力災害に関する相談についての各支部別の実績は別紙〔PDF 116KB〕のとおりであり、相談件数は各支部、とりわけ福島、郡山、いわき及び相馬のそれぞれにおいて、相当の件数となっている。

また、当会では、2011年(平成23年)6月25日に各支部にて県内一斉原発事故損害賠償説明会を実施し、「福島県原子力災害・被災者記録ノート(通称「被災者ノート」)」の配布、個別相談などを行った。

このときの来訪者数(概数)は、福島約850名(配布部数は約1600部)、郡山約600名(配布部数は約1900部)、白河約300名(配布部数は約500部)、会津若松約550名(配布部数は約650部)、いわき約600名(配布部数は約1500部)、相馬約380名(配布部数は約1000部)というものであり、それぞれの会場に極めて多数の被災者が来場し、損害賠償の説明を受けている。

以上の状況によれば、福島県内全域に、広く今回の原子力発電所事故による被災者が存在し、それぞれの地域において相当程度の和解仲介の需要があることは明らかである。

4. よって、当会は文部科学省に対し、原子力損害賠償紛争解決センターにおける和解仲介手続の実施場所について、下記のとおり求める。

(1)原子力損害賠償紛争解決センターにおける和解仲介手続について、福島及び東京の二カ所の事務所のみにおいて実施するのではなく、全国各地に広く避難している被災者が容易に利用できるよう、実施場所について特段の配慮を行うこと。

(2)上記和解仲介手続について、福島県内においては、少なくとも福島市、郡山市、白河市、会津若松市、いわき市、相馬市及び南相馬市のそれぞれにおいて実施すること。

2011年(平成23年)08月10日
福島県弁護士会
会長 菅野 昭弘

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