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東日本大震災及び原子力発電所事故による被災者の債務救済に関する会長声明

東日本大震災は、当県を含む被災地に未曾有の被害をもたらし、被災者に多大な犠牲と辛苦を負わせた。さらに、東京電力福島第一原子力発電所及び福島第二原子力発電所における事故(以下「原子力発電所事故」という。)によって、当県においては生活権の侵害、風評被害を始め、様々な被害が現在進行中である。

このような中、当会としては、被災者の人権保障の観点から、債務負担のある被災者の救済の一助となることを期し、以下の施策の早期実現を国に対して求める。

1. 被災者が生活再建を図る相当期間、無条件・無利子で返済を猶予する施策をとること。

被災者は、生活再建がなされるまでは借金の返済に充てるべき金銭的な余裕はない。したがって、借入債務全般について、被災者において生活再建がなされるまでの相当期間は、金融機関、貸金業者等において、返済を猶予し、かつ、その期間、利息や遅延損害金を発生させない対応を執るよう指導するなど適切な措置をするべきである。

なお、当県においては、今なお原子力発電所事故による放射能汚染被害が継続して発生していることから、猶予すべき相当期間の検討に当っては、かかる当県独自の事情にも十分配慮すべきである。

2. 金融機関やクレジット会社に対する債務について、被災者が返済を延滞したとしても、被災者から震災及び原子力発電所事故(以下「震災等」という)により返済や支払いができないとの申立てがあった場合その他震災等により返済できないものと認められる場合には、一定期間、信用情報上、延滞情報としての掲載をしないよう各信用情報機関に対し、監督・指導するなど適切な措置をとること。

3. 住宅ローンの免除・軽減を促進するため、被災者向けの債務の免除について、金融機関が容易に無税償却できる措置を導入するなどの立法的措置を含めた積極的な各種方策をとること。

東日本大震災により住宅が滅失、損壊し、また原子力発電所事故により避難を余儀なくされた被災者の中には、住宅ローンが残存する者もおり、被災者が住宅を再築・改築・再購入するために、既存の住宅ローンとは別に新たな住宅ローンを組むと、二重の住宅ローンとなり、多額の債務の負担を強いられることになる。

かかる二重ローンの問題を解決するためには、金融機関が既存の住宅ローン債務を免除することが考えられるが、かかる免除にあたっては、容易に無税償却が認められないなどの税務上の問題が存在している。そのため、被災者の既存の住宅ローン債務を免除した場合に、簡便に無税償却できるようにするなどして、金融機関が被災者の生活再建のための債務免除を容易になし得る制度を設け、かつ、被災地の金融機関への公的資金の注入等により、かかる金融機関の取組みを促す必要がある。

同時に、免除を受けた被災者が免除益部分について所得税を課せられないようにすることも必要である。そこで、上記の点を含めた税法上の特例を創設すべきである。

このような特例の創設は生産設備を失ったり、原子力発電所事故により避難を余儀なくされている上記被災者たる中小事業者の既存の債務の場合も同様である。

4. 破産、民事再生の特例として以下の各事項を設けること。

(1)自由財産の範囲の拡大に向けた措置
被災地においては、多重債務を抱える被災者もいるが、そうした被災者が自己破産を選択せざるを得ない場合、被災者の経済生活の再生の機会を確保するために、自由財産の額を引き上げる必要がある。
さらに、生活基盤である居住用不動産、生業に必要な自動車・船舶・農機具等は自由財産に含めることできる等、裁判所において被災地の実情に照らした弾力的な適用が図られるよう解釈指針が定められるべきである。

(2)個人再生の利用要件の拡大・緩和
被災者の生活再建、事業再建は、平時以上の負担となることから、個人再生の適用場面を広げることにより、生活再建や事業再建を積極的に図る必要がある。
そこで、特例法により、被災者については、個人再生の利用要件としての債務額の上限額を引き上げるべきである。
また、個人再生における最低弁済額の要件の引き下げや最大5年に留まっている弁済期間の延長等についても緩和すべきである。

(3)申立に係る疎明資料不足に対する措置
震災によって、あらゆる資料を喪失した被災者も少なくないため、上記の各手続を申立てる際には、裁判所においても、資料不足に対して厳格な対応をせず、弾力的な手続を行われるよう解釈指針が定められるべきである。

5. 相続放棄の熟慮期間を自動延長すること。

今般の大地震の影響により、相続開始から3か月という短期間に相続の承認・放棄の是非について判断できないだけでなく、熟慮期間の伸長の申し立てすらできない被災者が多数発生すると思われる。

したがって、被災者については、相続放棄の熟慮期間伸長の申立てがなくても、少なくとも1年間は相続放棄の熟慮期間を延長する特例法を設けるべきである。

6. 破産等の予納金等への法律扶助の拡大、簡易な手続による法律扶助利用、扶助された費用の償還義務の猶予・免除のための措置(財政上の措置を含む)をとること。

7. 債務を負った被災者の不安を解消し、その生活再建の一助となるべく、政府において、自らの責任で債務その他の法律相談に関する相談が可能な窓口の設置を図る等して、被災者に対する法的支援を積極的かつ速やかに推進し、その円滑な実施のために最大限の措置をとるとともに、テレビ・新聞等あらゆる媒体を用いて、被災者に対し、分かりやすい形での広報をおこなうこと。

以上

2011年(平成23年)05月11日
福島県弁護士会
会長 菅野 昭弘

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