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原子力損害賠償紛争審査会の審議において福島県民の意見が十分に反映されるよう求める会長声明

1. 平成23年(2011年)3月11日に発生した東京電力福島第一原子力発電所(以下,「福島原発」という。)の原子炉等冷却機能喪失事故からすでに1か月以上が経過したが,未だ事故収束の見通しすら立たない状況にある。

2. このような中,同年4月11日に,原子力損害の賠償に関する法律(以下,「原賠法」という。)に基づき,文部科学省内に原子力損害賠償紛争審査会(以下,「紛争審査会」という。)が設置され,同月15日に同審査会の第1回会合が開催された。

避難所を対象とする無料法律相談会などにおいても,福島原発周辺の避難指示区域内からの避難住民から,避難指示により生活の本拠も仕事も失ったとの切実な相談が多数寄せられている。このような現状から,当会としても,紛争審査会において,避難住民らの当面の生活に必要な資金の補償など,緊急を要する措置についての指針が迅速に定められることについては,特段の異論がないところである。

3. 他方で,紛争審査会は,上記のように原賠法に基づき設置されるものであり,「原子力損害の賠償に関して紛争が生じた場合における和解の仲介及び当該紛争の当事者による自主的な解決に資する一般的な指針の策定にかかる事務を行う」ものとされている(同法第18条第1項)。

また,紛争審査会は,「原子力損害の範囲の判定の指針を定めること」(同条第2項第2号)や「原子力損害の調査及び評価を行う」(同第3号)とされている。

このようなことからすれば,紛争審査会が行う事務の処理方法や結果により,福島原発を巡る一連の災害から生じ,また,将来生じる損害の賠償に関する国の基準が事実上策定されることになる。これは,避難指示の対象となっている地域の住民の方々はもとより,主な被災県である福島県の県民全員が切実な利害関係を有する重大な問題である。

現在,福島県民は,遅々として進まない福島原発事故処理の状況を憂慮し,既に大気中に拡散された放射性物質による汚染に加え,日々新たに判明する食品や水,土壌,さらには海洋の汚染に恐れおののきながら日常生活を送らなければならない負担を抱えている。また,福島県を巡る風評被害は既に甚大であり,一部では福島県民に対する不当な差別的取扱いにまで発展しているのが実情である。

このような中で,今回の福島原発事故の損害の範囲等について,最大の利害関係人である福島県民の意見が反映されることなく,単なる財源論や電力政策の都合などのみから指針が形成され,損害の評価がなされることは,到底許されるものではない。

4. 以上の点に加え,①「原子力損害の範囲」の問題は,つまりは相当因果関係の問題であり法律専門家の意見が反映されることが必要であること,②如何なる損害が,相当因果関係を有する損害であるかは法理論のみで決すべきものではなく,被害地域や被害者の実情を踏まえて行わねばならないもので,①にいう法律専門家には被害地域の実情を熟知した法律実務家を加える必要があること,③福島原発事故は未だに収束には至っておらず,今後も新たな放射性物質の放出が継続するものであること,④それゆえに,状況によっては今後も新たな避難指示や汚染地域の拡大が生じる可能性が十分残されていることを踏まえ,当会として,紛争審査会のあり方に関し,国及び福島県に対し,以下の点について対応を求める。

(1)国は,原子力損害賠償紛争審査会において,今後,一般的な指針(原賠法第18条第1項)及び損害の範囲の判定の指針(同条第2項第2号)の策定並びに損害の評価(同第3号)を行うあたり,関係省庁のデータのみを基にするのではなく,地元住民の意見を十分に反映した手続において,被害実体を直視し可能な限り多くの実例を検討,分析して慎重に審議を行うこと。

(2)(1)の見地から,国は速やかに政令等を改正し,原子力損害賠償紛争審査会に被害地域の実情を熟知している法律実務家を新たに登用すること。

(3)国は原子力損害賠償紛争審査会に,公開された会合以外でのやり取りを含めて,全ての議論の過程を明らかにさせること。

(4)福島県は,原子力損害賠償審査会においてなされる指針の策定及び損害の評価が,福島県民の現在及び将来に極めて重大な影響を及ぼすことを重大に受け止め,同審査会に福島県民の意見が十分反映されるよう,国に対して,強く求めるべきこと。

2011年(平成23年)04月21日
福島県弁護士会
会長 菅野 昭弘

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