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被疑者取調べの全過程の録画による可視化を求める決議

わが国では、いわゆる「氷見事件」「志布志事件」「北方事件」「足利事件」など、密室での違法不当な取調べにより虚偽の自白がなされ、冤罪であることが判明した事例が平成の時代に入っても後を絶たず、取調べの可視化(取調べの全過程の録画)の必要性が繰り返し指摘されてきたところである。

2010年(平成22年)9月10日には、いわゆる厚労省元局長事件について無罪判決が言い渡された。この事件では、検察官が、元部下ら関係者に対する強引な取調べにより、予め描いたストーリーに沿った内容の供述調書に署名押印させるという、違法不当な捜査手法を採っていたことが明らかになっている。

以上のような、違法不当な捜査手法を根絶するためには、共犯者と目されて取調べを受けている者も含めたすべての被疑者について、その供述の状況を客観的に記録し、事後的に検証できるよう、取調べの全過程の録画、すなわち取調べの可視化が不可欠である。

取調べの可視化が実現すれば、違法・不当な取調べに対する極めて有効な抑止効果を生じ、任意性が争われるような自白は激減するであろう。

また、仮に公判において自白の任意性・信用性が争われた場合でも、どのような取調べが行われたかは、録画された記録を再生すれば疑問の余地なく明らかとなり、2009年(平成21年)5月から現に実施されている裁判員裁判を前提としても、自白の任意性・信用性についての審理を合理的で分かりやすいものとすることができる。

検察・警察は、現在、取調べの「一部録画」を実施しているが、これは捜査官が被疑者に質問し、被疑者がこれに答えるという取調べの核心部分を録画するものではなく、一通り取調べが終了した後の調書の作成場面のみを録画しているに過ぎないから、被疑者の供述の状況を事後的客観的に検証することができず、違法不当な捜査を抑止することはできない。また、自白の任意性・信用性が争われた場合には、「一部録画」の場面に至る過程について、被告人質問と捜査官の証人尋問という従来型の審理を行わざるを得ない。

むしろ、取調べの「一部録画」では、もともと違法不当な捜査により生じた虚偽の自白について、あたかも任意になされたかの如き印象のみを与える危険性が極めて高い。

以上のとおり、違法・不当な取調べを根絶するため、また、現に行われている裁判員裁判を前提としても自白の任意性・信用性の審理を合理的で分かりやすいものとするため、任意の取調べを含む被疑者の取調べの全過程を録画すること、すなわち取調べの可視化はわが国刑事司法における喫緊の課題というべきである。

したがって、当会は、一日も早く実現すべき最優先課題として、国に対し取調べの全過程の録画を義務付けることを内容とした法律を制定することを求めるとともに、捜査機関に対し法律の制定を待たずに直ちに取調べの全過程の録画を実施するよう求める。

以上のとおり、決議する。

2011年(平成23年)02月26日
福島県弁護士会

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