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原発被害集団訴訟・千葉地裁判決を受けての会長声明

原発被害集団訴訟・千葉地裁判決を受けての会長声明

 2017(平成29)年9月22日、千葉地方裁判所は、標記訴訟についての判決(以下「千葉地裁判決」という。)を言い渡した。2011(平成23)年3月11日に発生した東京電力福島第一原子力発電所事故(以下「本件原発事故」という。)については、全国各地において被害者らによる集団訴訟が提起されているが、千葉地裁判決は、これら集団訴訟に関するものとしては、本年3月17日の前橋地裁判決に次ぐ二例目の判決である。

千葉地裁判決は、本件原発事故に係る国の責任に関し、経済産業大臣が、遅くとも2006(平成18)年までに、福島第一原発の敷地高さを超える津波を予見することは可能であったと認定しながら、予見可能性の程度が必ずしも高くなかったとして、結果回避措置の内容については規制庁の専門的判断に委ねられ、結果回避措置を直ちに講ずべき義務が導き出されるとは言えず、また、原告らの主張する結果回避措置をとっていたとしても本件原発事故が回避できたと言えるかは定かではないなどとして、国の国家賠償法上の責任を否定した。また、東京電力に対する関係では、原子力損害賠償法に基づき賠償責任を認めたものの、「慰謝料を増額することが相当といえるような重大な過失があったということはできない」とした。

しかし、1992(平成4)年のいわゆる伊方原発訴訟最高裁判決が「原子炉施設の安全性が確保されないときは、当該原子炉施設の従業員やその周辺住民等の生命、身体に重大な危害を及ぼし、周辺の環境を放射能によって汚染するなど、深刻な災害を引き起こすおそれがあることにかんがみ、右災害が万が一にも起こらないようにする」ための規制権限行使が必要と判示していることや、また、2006(平成18)年9月に改訂された原子力発電所耐震設計審査指針が「施設の供用期間中に極めてまれではあるが発生する可能性があると想定することが適切な津波によっても、施設の安全機能が重大な影響を受けるおそれがない」ことを求めていることなどに鑑みても、敷地高を超える津波が予見できたのであれば、少なくとも原子力事業者に対して、想定される津波が襲来した際のシミュレーションなどを行わせることはできたはずであり、それがなされていれば、最低限の津波対策を行わせることも可能であったはずであるから、本件原発事故のような過酷事故は生じなかった可能性が高い。千葉地裁判決のように、予見可能性があったことを認めながら、国の責任を否定するのは、結果として、国が最小限の対策を講ずることの検討すらせず放置したことを免責することとなり、大いに疑問がある。何より、今回の東京電力福島第一原子力発電所事故のような悲惨な事故が二度と発生しないように国の責任に関する判断を求めた被害者の方々の思いに全く応えていないという点で極めて残念である。

他方で、千葉地裁判決は、原子力損害賠償紛争審査会の策定した「東京電力株式会社福島第一、第二原子力発電所事故による原子力損害の範囲の判定等に関する中間指針」(以下「中間指針」という。)等の賠償基準には必ずしも拘束されず、「従前暮らしていた生活の本拠や、自己の人格を形成、発展させていく地域コミュニティ等の生活基盤を喪失したことによる精神的苦痛、相当期間にわたり長年住み慣れた住居及び地域における生活の断念を余儀なくされたことによる精神的苦痛など、本件事故により生じる様々な精神的苦痛に係る損害のうち、避難生活に伴う慰謝料では填補しきれないものについては、…賠償の対象となるべきである」とし、またいわゆる「区域外避難者」についても、「避難の合理性が認められる場合には、避難をした者の個別・具体的な事情に応じて、避難により生じた相当な範囲の損害が賠償との対象となり得る」として、本件原発事故による損害の範囲等に関し、中間指針等に基づく賠償基準よりも広げる判断をした。

当会は、これまでも、本件原発事故の被害に関する損害賠償が、被害実態から見て十分でないことについて、たびたび意見を表明してきた(例えば、直近では2016(平成28)年2月20日付「東京電力福島第一原発事故の被害者に対する個別の実情に応じた賠償を継続し、健康不安を解消し、並びに避難の継続・帰還のいずれの選択も尊重する施策の実行を求める決議」)が、千葉地裁判決が、被害者の蒙った被害を直視し、これまでの賠償基準には必ずしもとらわれることなく司法判断を下したという点については、その賠償水準が十分かについては別としても、本年3月の前橋地裁判決に比べて前進と評価できる面もある。

本件原発事故から六年半以上の期間が経過したが、原発事故被害者の多くは、現在も目に見えない放射線被ばくの不安に苛まれるとともに、いわれなき差別に直面するなど、有形無形の心理的・物理的・経済的負担を余儀なくされており、程度の差こそあれ、事故前よりも生活の質が低下したままである。

当会は、今回の千葉地裁判決を受け、あらためて、国及び東京電力が事故惹起に係る過失責任を自ら認め、全ての被害者に十分な賠償を行うとともに、被害者の生活の質を回復させるための環境回復・健康被害予防・生活支援等の様々な施策をこれまで以上に実施することを強く求めるものである。

2017(平成29)年10月11日

福島県弁護士会
会長  渡 邊 真 也

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