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福島原発事故避難者の損害賠償請求訴訟前橋地裁判決を受けての会長声明

 2017(平成29)年3月17日、前橋地方裁判所において、東京電力福島第一原子力発電所(以下「本件原発」という。)事故による避難者の損害賠償請求訴訟の判決(以下「前橋地裁判決」という。)が言い渡された。本件原発事故については、その被害者を原告として、被害の賠償等を求める集団訴訟が全国各地の裁判所に提起されているが、こうした集団訴訟の判決としては、前橋地裁判決が初めてのものである。
前橋地裁判決は、慰謝料の考慮要素の一つとして、被告東京電力ホールディングス株式会社(以下「東京電力」という)の過失について判断した。まず、東京電力の過失における予見可能性として、前橋地裁判決は、いわゆる「長期評価」(地震調査研究推進本部の「三陸沖から房総沖にかけての地震活動の長期評価について」)が公表された2002(平成14)年7月31日から数か月後には、東京電力は、長期評価の知見をもとに想定津波の計算をすることができ、東京電力が2008年(平成20年)5月頃に行った試算結果に照らすと、津波の高さは敷地地盤面を優に超えるものと予見できたと認められるとした。また、東京電力の結果回避可能性については、本件原発の敷地地盤面を優に超えて非常用電源設備を浸水させる津波の到来につき、遅くとも2002(平成14)年7月31日から数か月後には予見することが可能であり、想定津波高試算を行った2008(平成20)年5月には、敷地地盤面を優に超える津波の到来を予見していたにもかかわらず、配電盤や非常用ディーゼル発電機の上階設置などの対策を怠ったとして、東京電力の過失を認めた。
また、国の責任については、遅くとも2008(平成20)年3月31日には、東京電力に対して、結果回避措置を講じる旨の技術基準適合命令を発すべきであったとし、これらの規制権限を行使すれば、本件事故を防ぐことは可能であったとして、規制権限を行使しなかったことは著しく合理性を欠くと述べ、国家賠償法上違法であると断じた。
このように、前橋地裁判決は、本件原発事故惹起にかかる国・東京電力の過失責任をいずれも認めた。これは、本件原発事故後の同種事案に関する判決としては初めての判断である。
当会は、本件原発事故直後の2011(平成23)年6月27日付「福島第一原子力発電所事故を早急に収束させ、住民の安全を確保し原状回復をするとともに、原子力政策を転換し、被災地域を自然エネルギー推進の先進的地域とすることを求める意見書」において、「福島第一原発をはじめとする原子力発電所については、これまでも、今回の事故と同じような過酷事故の危険が現実に存在することがたびたび指摘・警告されてきた。にもかかわらず、原子力発電事業者である電力会社は、警告を無視して対策を怠ってきた。また、原発推進を国策としてきた国も、原子力発電の安全基準を策定し、事業者を監督する責任を負うにもかかわらず、警告を無視して対策を怠ってきた。これらのことが、今回の事故を招いたのであり、今回の事故は明らかに東京電力及び国が惹起した『人災』であると言わなければならない」と指摘したが、前橋地裁判決は、当会が指摘したと同様、東京電力及び国の過失責任を認めた点で、本件原発事故の被害者に対する賠償や被害者救済に大きな影響を及ぼしうるものである。
他方、前橋地裁判決が認容した損害賠償額が、被害者である原告らの被害実態に見合った十分なものであるかという点については大いに疑問が残るところであり、なお慎重な検討が必要である。
当会は、本件原発事故の被災地に所在する弁護士会として、これまでも、本件原発事故の被害に関する損害賠償が、被害実態から見て十分でないことについて、たびたび意見を述べてきたが、前橋地裁判決によって、東京電力及び国の過失責任が認められた今、損害賠償の水準についての再検討は避けられないといえる。当会は、本件原発事故の最大の被災地に所在する弁護士会として、東京電力及び国が、本件原発事故の賠償水準について再検討を行い、被害者らに対してすみやかに十分な賠償を行うことを強く求めるものである。

2017年(平成29年)4月11日
福島県弁護士会
会長  渡 邊 真 也

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