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「東日本大震災の被災者に対する援助のための

「東日本大震災の被災者に対する援助のための
日本司法支援センターの業務の特例に関する法律」の再延長を求める決議

  「東日本大震災の被災者に対する援助のための日本司法支援センターの業務の特例に関する法律」(平成24年法律第6号。以下、「特例法」という。)は、2012(平成24)年に3年間の時限立法として制定されたが、その後2015(平成27)年3月31日に、有効期限を3年間延長して2018(平成30)年3月31日までとする延長法案が成立し、現在も運用されている。特例法は、東日本大震災について災害救助法が適用された市町村の被災者を対象として、日本司法支援センター(以下、「法テラス」という。)が実施する民事法律扶助業務の付随業務として「東日本大震災法律援助事業」を創設した。同事業は、通常の民事法律扶助業務とは異なり、①援助を受ける者の資力を問わない、②対象事件の範囲を裁判外紛争解決手続(いわゆるADR)や行政不服申立手続に拡大する、③事件の係属中は立替金の償還等を猶予する、などして弁護士等の専門家による相談や代理を利用できるというメリットがあり、被災者にとってより利用しやすく、被災に伴う法的紛争の解決のために活用されてきた。

東日本大震災から6年を経過しようという今日でも、震災に起因する法的紛争は、依然残存しており、今後も、仮設住宅(みなし仮設住宅を含む)からの退去や各種の復興事業に伴う用地買収・収用等をめぐり、換地や補償等に関する法的問題や、その前提となる相続問題、あるいは住宅ローンに関する債務問題などが、相当数発生することが見込まれる。1995(平成7)年の阪神淡路大震災に関しては、発生から20年以上を経過した現在においても、いわゆる借上げ復興住宅に入居して生活している被災者が自治体より立退きを求められるという問題が生じていると報道されており、単に災害から一定期間が経過したというだけで、被災者固有の法的紛争やその解決の需要が消滅するわけではないのである。

特に、福島県においては、地震災害・津波災害に加えて、東京電力福島第一原子力発電所事故(以下、「原発事故」という。)の発生に伴い、広範な地域が放射性物質により汚染され、今なお多数の人が震災時の住所に帰還することができない状態が継続している。放射性物質汚染による被害は、その地域が広汎であるとともに、多種多様な被害が生じており、特に健康被害が晩発性であってそのリスクが客観的に明らかでないこともあって、その被害の全体像は今もって明らかではない。現時点においても、震災前の住所地からの避難を継続せざるを得ずにいる避難者は4万人近く存在しており、また避難をせずに滞在している者も、放射線被ばくによる健康リスクを危惧せざるを得ない状態での生活を余儀なくされている。このように、原発事故による被害者の多くは、原発事故後一定期間を経過した現在もなお、避難あるいは原発事故についての損害賠償を含む法的紛争を抱えており、事故発生前と同様の生活を回復することができない状況にある。原発事故被害についての損害賠償については、東京電力ホールディングス株式会社(旧東京電力株式会社)に対する直接の賠償請求だけでなく、原子力損害賠償紛争解決センターに対する和解仲介手続(ADR)申立てや全国各地の裁判所における訴訟提起なども相次いでおり、極めて多数の法的紛争が存在するが、それらの法的紛争が全体として終局的解決を迎える目途は立っていない。また、原発事故被害者の中には、いまだに賠償請求を行っていない者(いわゆる「未請求者」)も多数存在していると見られており、本来解決すべき法的紛争の多くが、潜在化した形で残されている状況にある。

このような状況を反映しているのが、当会会員が特例法に基づく震災法律援助事業を利用して行った法律相談や代理業務の数である。当会会員を通じた法律相談援助件数は、2015(平成27)年度で1万2930件、2016(平成28)年度(ただし、同年4月から12月まで)で8744件にのぼる。また、当会会員を通じた代理援助件数は、2015(平成27)年度で231件、2016(平成28)年度(ただし、同年4月から12月まで)で97件にのぼる。また、当会原子力発電所事故被害者救済支援センターにおける受付数は、2015(平成27)年で91件、2016(平成28)年で38件と未だ原発事故に関する相談は継続しており、同じく当会において実施している震災原発無料電話相談は2015(平成27)年で313件、2016(平成28)年で246件にのぼる。

このように、被災者の抱える法的紛争の解決のための法律相談援助や代理援助等の需要は、震災後6年を経過しようという今日でもなお、高い水準で存在し続けている。また、当会は福島県及び福島県内の全市町村(59市町村)を対象として、特例法の延長に対するアンケートを実施したところ、回答のあった34自治体のうち、約88%に相当する30自治体から、特例法の延長を希望する旨の回答が寄せられた。同アンケートにおいては、特例法の延長を希望する理由として、①今なお全国各地に原発事故避難者を抱えており、被災者に寄り添った支援をお願いしたい(双葉町・大熊町・浪江町・南相馬市等)、②被災者の生活再建に関する法律相談は多岐にわたり、直ちに法律相談の需要がなくなるとは考えにくい(福島県・相馬市・広野町等)、③福島県内においては、原発事故による風評被害がいまだに続いている(喜多方市・猪苗代町等)などの回答が寄せられている。このように、福島県内の自治体からは特例法の延長が強く求められているとともに、自治体が延長を求める理由にも極めて高度の合理性がある。
以上のように、特例法に基づく援助の需要は、震災後6年を経過しようという今日でも継続して高い水準で存在し続けており、さらに、将来にわたって存在し続けることが見込まれる。特に、「東日本大震災における原子力発電所の事故により生じた原子力損害に係る早期かつ確実な賠償を実現するための措置及び当該原子力損害に係る賠償請求権の消滅時効等の特例に関する法律」(平成25年法律第97号)により、原子力損害賠償請求権の消滅時効が「損害が生じた時」から「10年」に延長されていることからすれば、今後少なくとも4年以上は、原発事故被害者による原子力損害賠償請求等についての専門家による支援を容易にするために、特例法による手当を継続する必要がある。

しかるに、本特例法附則第3条第1項は、「この法律は、平成30年3月31日限り、その効力を失う」としており、このまま期限延長がなされなければ、残り約1年で特例法は失効し、その後は、被災者が特例法に基づく法律相談援助や代理援助等の援助を受けることができなくなってしまうことになる。上記のような状況のもとで、このまま特例法が失効すれば、東日本大震災及び原発事故の甚大な被害から立ち直り、もとの生活を取り戻そうとしている被災者・被害者の生活再建と、被災地の復旧・復興に水を差すことになることは明らかである。

よって、当会は、特例法の有効期限を、少なくとも2021(平成33)年3月31日まで再延長することを強く求める。

  右決議する。
2017(平成29)年2月25日
福島県弁護士会

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