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非司法競売手続の導入に反対する会長声明

現在、内閣府の規制改革会議において、競売手続の合理化、迅速化などのために、アメリカの競売制度を参考とした非司法競売手続の導入が検討されている。検討中の案は、融資時に債権者と債務者、所有者との間で競売の実行方法を取り決め、実行時には民間オークション方式により売却を行おうとするものである。この案によると、現行の裁判所の競売手続において作成されている現況調査報告書、評価書、物件明細書(いわゆる3点セット)が作成されず、売却価格の下限規制も設けることなく、競売手続が実施されることとなる。

しかしながら、我が国におけるこれまでの競売手続に関する中心的な課題は、暴力団や悪質な競売ブローカーなどの反社会的勢力による執行妨害を排除し、公正で開かれた競売制度を確立することであり、近年、不当な執行妨害を排除し、透明かつ迅速な手続とするための法改正が行われてきた。その結果、平成18年度においては、不動産競売事件の約4分の3は申立から半年以内に売却実施処分に付され、売却率も全国平均で約81%、東京、大阪においては100%に近い数字となっている。

これに対し、非司法競売手続においては、3点セットが作成されないことになれば、担保物件についての的確な情報を入手することができず、一般人が安心して競売に参加することが困難になる。その結果、非司法競売手続は反社会的勢力の資金源として利用されるおそれがある。これは、安心して多くの買受希望者が参加できる開かれた競売制度を目指してきた担保執行法制の流れに逆行するものである。

さらに、非司法競売手続においては、売却価格の下限規制がないため、担保物件が適正価格に比べて不当に低い価格で売却される可能性がある。アメリカで広く普及しているノンリコースローンの場合、担保物件の売却後は債務者や保証人は残債務を請求されないため、担保物件が不当に低価格で売却されても債務者や保証人が不利益を受けることはないが、ノンリコースローンがほとんど普及していない日本では、担保物件が不当に低い価格で売却されれば、残債務について支払義務を負う債務者や保証人は多大な不利益を被ることとなる。

他方、不動産担保ローンを扱う貸金業者に対しては、非司法競売手続により担保物件を自ら不当に低い価格で落札した上、市場価格で売却することにより、利息制限法所定の上限利率を超える利息を得ることを許す結果になる。

仮に、融資時に債務者や所有者に裁判所の競売手続と非司法競売手続の選択の自由を認めたとしても、融資時においては債権者が債務者及び所有者に対して優越的地位にあるから、債務者及び所有者は事実上非司法競売手続を強制されることになる。

以上のとおり、現在の我が国においては非司法競売手続を導入する必要性は存在せず、また、同手続は反社会的勢力が不当な利益を得る目的で介入してくる事態を招きかねない点で、一般市民が参加可能な「開かれた競売制度」を目指してきた我が国の担保執行法制の流れに逆行し、債務者や保証人の利益を害することとなるため、その導入に強く反対するものである。

2008年(平成20年)4月25日
福島県弁護士会
会長  荒木 貢

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