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陸上自衛隊による情報収集活動に対する抗議声明

1. 平成19年6月7日付新聞報道により、陸上自衛隊情報保全隊及び陸上自衛隊東北方面情報保全隊が、イラクへの自衛隊派遣に反対する市民運動等の情報を収集し、得られた情報を基に「イラク自衛隊派遣に対する国内勢力の反対動向」(陸上自衛隊情報保全隊作成)、「情報資料について」(陸上自衛隊東北方面情報保全隊作成)と題する資料を作成していたことが明らかになった。

「イラク自衛隊派遣に対する国内勢力の反対動向」には、自衛隊のイラク派遣に反対する集会等について主催団体、行動形態(集会、署名活動、デモ等)、年月日、行動概要等の記載があり、関係者の実名記載、デモや集会の写真の多数添付がなされていた。また同資料によれば、福島県内におけるイラク自衛隊派遣に対する反対集会及び宣伝活動がその情報収集の対象となっていた。

「情報資料について」(平成15年10月~平成16年2月)には、集会等の年月日、場所、関係団体、関係者の人名、活動内容の記載があり、その多くは自衛隊のイラク派遣に反対する集会等についての記載であるが、医療費負担増、国民春闘に対する街頭宣伝等、自衛隊とは無関係の市民活動についての記載もあった。また、同資料によれば、福島県内における陸上自衛隊のイラク派遣に反対する集会及びデモ、地方議会における陸上自衛隊のイラク派遣反対決議、新聞記者による取材活動、一般市民が行った自衛隊活動への抗議等がその情報収集の対象となっていた。

2. 以上のような陸上自衛隊情報保全隊及び陸上自衛隊東北方面情報保全隊が、市民の集会参加、集会での発言などに関して情報を収集し、記録・分類しているという事実自体、一般市民にとって大きな脅威であり、国民の自由な意見表明に対する不当な圧力となりかねず、表現の自由に対し強い萎縮効果をもたらすものであり、憲法21条の趣旨に反するものといわなければならない。

さらに「イラク自衛隊派遣に対する国内勢力の反対動向」にはデモ等に参加した市民の容姿を撮影した写真が添付され、「イラク自衛隊派遣に対する国内勢力の反対動向」及び「情報資料について」には、集会に参加した市民の氏名、発言内容といった個人情報が記載されているが、このような活動は個人のプライバシーを侵害し、憲法13条の趣旨に反するものである。

3. 国民が自由に政治的意見を述べ、多様な意見を表明することができることは民主主義社会の根幹をなす基本原則であるところ、上記陸上自衛隊情報保全隊及び陸上自衛隊東北方面情報保全隊による情報収集活動は、情報保全隊の任務を明らかに超えていると言わざるを得ない。

そこで当会は政府、防衛省、陸上自衛隊東北方面情報保全隊に対し、今般明らかになった陸上自衛隊情報保全隊及び陸上自衛隊東北方面情報保全隊による市民運動等の情報収集活動に対して厳重に抗議するとともに、今後個人及び団体に対する情報収集活動を行わないよう強く求める。

2008年(平成20年)3月25日
福島県弁護士会
会長 浅井 嗣夫

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