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東日本大震災及び原子力発電所事故から4年を経過するにあたっての会長談話

東日本大震災及び原子力発電所事故から4年を経過するにあたっての会長談話

 はじめに
本日,東日本大震災及び東京電力福島第一原子力発電所事故(以下「原発事故」という。)から,4年を経過した。
当会は,東日本大震災及び原発事故発生の直後から,各地の避難所や仮設住宅等での法律相談の実施,原子力損害賠償についての説明会の開催,被災者・被害者の救済と被災地復興のための各種の政策提言などの活動に取り組んできたところである。しかし,震災発生から4年を経過した現在においても,行政の把握している範囲だけでも,福島県から他の都道府県への避難を継続している避難者は4万人以上,県内で避難を継続している避難者は7万人以上に及んでいる。行政が把握していない避難者や,行政による「避難者」の定義にはあてはまらない移住者などをも含めれば,さらに多くの県民が今もなお避難による困難な生活を強いられている。また,避難しなかった県民・避難後に帰還した県民も,放射線被ばくによる健康リスクへの不安や,「風評被害」の継続などにより,震災・原発事故以前の平穏な生活を完全に取り戻しているという状況にはない。しかも,震災から4年の年月の経過により,被災者・被害者の置かれた困難は長期化し,原発事故による地域汚染の長期化とこれをめぐる健康リスクについての認識等についての意見対立など,問題はさらに複雑かつ深刻化していると言わざるを得ない。にもかかわらず,原発事故の被害や被災,福島県の現状についての報道は,特に福島県外においては減少しており,被災・被害の「風化」「イメージの固定化」が指摘されている。当会は,このような状況の下で,これまでの本会の被災者被害者支援活動も踏まえ,福島県民の「人間の復興」を果たすための課題を,以下,4点に絞って指摘する。
1 原発事故被害者に対する賠償問題について
当会は,原発事故被害者の救済のための完全かつ迅速な賠償を求め,これまで,避難所や仮設住宅での法律相談,電話での無料法律相談,「原発事故被害者救済支援センター」による相談担当弁護士の紹介などの個別救済支援活動を行ってきた。また,個別救済支援活動の中で浮かび上がってきた賠償問題について,随時,数々の政策提言を行ってきた。しかし,現実には,すべての被害者が十分な賠償を受けるには程遠い状況である。特に,事業者の営業損害については,昨年(2014年)12月に,資源エネルギー庁と東京電力株式会社(以下「東京電力」という。)が一律に打ち切るとの「素案」を示すなどしており,これにより,事業者だけでなく,その他の被害者にも,「賠償が打ち切られるのではないか」との不安が広がっている。放射性物質汚染の影響の長期化の中で,避難指示区域内の事業者が従前と同様の営業ができるだけの状況にはなく,また,避難指示区域外の事業者も,いわゆる「風評被害」の長期化や商圏の縮小・喪失に苦しんでおり,こうした現実を踏まえない賠償の打ち切りは,県内の事業者にとって,死活問題と言わざるを得ない(本年2月21日付「東京電力福島第一原発事故による営業損害の賠償打ち切り案の撤回を求める会長声明」)。近時の報道によれば,資源エネルギー庁及び東京電力は,「素案」の撤回を表明したとのことであるが,今後の賠償の継続についての案はまだ示されていない。また,政府が原発事故被害者への賠償問題を簡易迅速に解決するために創設した原子力損害賠償紛争解決センター(以下「原紛センター」という。)での和解仲介手続においても,東京電力が原紛センターの示した和解仲介案の受諾を拒否する事例が増加している。東京電力は,原紛センターの和解仲介案を尊重するとの「誓い」を反故にし和解案受諾を拒否しているが,これは,原紛センターの創設趣旨にも反するものであり,許されない。原紛センターが事実上機能しなくなれば,被害者としては,賠償請求のために,自ら訴訟を提起せざるを得なくなり,その負担は極めて重い。本会は,このような問題の解決のための当面の課題として,資源エネルギー庁及び東京電力に対し,避難等指示区域内外の事業者に対する営業損害の継続について,早期に案を示すこと,及び,政府に対し,原紛センターの和解仲介案に東京電力に対する片面的拘束力を認める旨の制度改正を行うことを,強く求める。
2 原発事故の収束について
福島第一原子力発電所においては,いまだに汚染水の海洋流出が観測されるなど,原発事故が収束したというには程遠い状況が継続している。この状況については,原発事故収束の技術的困難もあるものの,東京電力が汚染水の海洋流出の事実を把握していながら,1年近くにもわたって公表はおろか政府にも報告していなかったとの報道にも見られるように,東京電力が事故収束の当事者能力を失っていることが明らかであるにもかかわらず,国が事故収束作業を「東京電力任せ」にしていることも一因と考えられる。当会は,2013(平成25)年8月6日付「東京電力福島第一原子力発電所事故の収束作業及び放射性物質漏洩対策について国が直接関与し完全な対策を講ずることを求める会長声明」を発出し,「原発事故の収束及び廃炉に向けた作業,放射性物質の敷地外への放出を防止する作業等について,東京電力任せにせず,国の責任において具体的な作業計画を決定し,実施すること」などを求めているが,国は,これまで国策として原発推進政策をとってきたというだけでなく,電力事業者に対する安全規制を怠り,その結果として原発事故を惹起した以上,原発事故の収束についても,自ら責任を負うべきは当然である。当会は,原発事故収束について,国が直接に責任を負うべきことを改めて指摘するものである。
3 原発事故からの環境回復等について
本件原発事故は,放射性物質を環境中に大量に放出し,福島県内はもとより,県外にも広範な放射性物質汚染をもたらした。政府は,「平成二十三年三月十一日に発生した東北地方太平洋沖地震に伴う原子力発電所の事故により放出された放射性物質による環境の汚染への対処に関する特別措置法(以下「除染特措法」という。)」を制定し,除染特措法に基づき各地の除染事業が行われているところである。しかし,除染特措法に基づく除染については,技術的財政的限界もあり,住民が安心して生活できる水準(さらには,本件原発事故以前の水準)には必ずしも達していない。また,除染対象地域の住民は,除染の効果が必ずしも十分でないことや,除染によって生じた膨大な量の放射性廃棄物が地域の生活空間内に「仮置き」され,あるいは自宅の敷地内に一時埋設されるなどしていることから,いまだに放射線被ばくの不安から解放されていない。その一方で,除染廃棄物の保管・処分については,「中間貯蔵施設」の建設予定地の地権者と周辺地域の住民(建設予定地付近の住民だけでなく,除染廃棄物の搬出元や搬出ルート付近の住民を含む)それぞれの権利・利害を十分に調整することが必要であるところ,それらの調整が十分になされているかについては疑問が残るところである。さらに,最終処分に至るまでの工程については,現在のところ全く目途すらついておらず,このことは,「中間貯蔵施設」の30年という存続期間についても疑念を抱かせる結果となっている。上に述べたとおり,国は,原発事故の惹起について責任を負うものである以上,除染等による汚染地域の環境回復についても最後まで責任をもって推進すべき義務を負う。同時に,当会が2014年(平成26年)2月22日に発出した「長期的観点に立った放射性物質による汚染からの環境回復と地域復興の責任を果たすことを求める決議」でも明らかにしたように,原発事故からの環境回復については,汚染が長期間にわたるものである以上,長期的観点に立ち,必要な技術開発等も含めた環境回復策の検討が必要である。当会は,今後も,原発事故からの環境回復についての取組みを注視するとともに,必要な政策提言を継続していく。
4 被害者支援について
原発事故被害者の生活支援等のために,2012(平成24)年6月,「東京電力原子力事故により被災した子どもをはじめとする住民等の生活を守り支えるための被災者の生活支援等に関する施策の推進に関する法律」(以下「子ども被災者支援法」という。)が議員立法で成立した。子ども被災者支援法は,①「被災者生活支援等施策は、被災者一人一人が支援対象地域における居住、他の地域への移動及び移動前の地域への帰還についての選択を自らの意思によって行うことができるよう、被災者がそのいずれを選択した場合であっても適切に支援するものでなければならないこと、②被災者生活支援等施策を講ずるに当たっては、被災者に対するいわれなき差別が生ずることのないよう、適切な配慮がなされなければならないこと、③被災者生活支援等施策を講ずるに当たっては、胎児を含む子どもが放射線による健康への影響を受けやすいことを踏まえ、その健康被害を未然に防止する観点から放射線量の低減及び健康管理に万全を期することを含め、子ども及び妊婦に対して特別の配慮がなされなければならないこと」等の基本理念に立ち,避難者か否かにかかわらず,被災者(被害者)に対して,医療の提供,住宅の確保などを含む各種の生活支援を行うことを内容とするものである。しかし,子ども被災者支援法は,いわゆる「プログラム法」であり,同法に基づく支援策の基本方針の策定が長期にわたって遅延したこともあって,これに基づく施策が十分に実施されているかについては,多くの被害者から疑問・批判の声がある。当会は,今後も,被害者の実態と必要な施策のありかたについて注視し,子ども被災者支援法に基づく生活支援策の実施など,必要な政策提言を続けていく。
おわりに
東日本大震災は,「1000年に一度」とも言われる未曾有の被害を被災地にもたらした。そればかりでなく,原発事故は,わが国の近現代史上,まれに見る公害事件であると言え,福島県民は,これらにより,二重三重の苦しみをいまだに味わい続けている。このような「複合災害」から,被災者・被害者がもとどおりの生活を取り戻し「人間の復興」を果たすことは,もとより容易なことではない。当会は,被災地被害地に所在する弁護士会として,今後も,復興が完全に果たされるまで,被災者・被害者の個別救済だけでなく,救済のための施策の実行状況を見守り,政策提言を続けて行く決意であることを重ねて表明する。

2015(平成27)年3月11日
福島県弁護士会
会長  笠 間 善 裕

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