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トップページ > Topics > 会長声明 等 > 東京電力福島第一原子力発電所事故の収束作業及び放射性物質漏洩対策について 国が直接関与し完全な対策を講ずることを求める会長声明

東京電力福島第一原子力発電所事故の収束作業及び放射性物質漏洩対策について 国が直接関与し完・・・

東京電力株式会社(以下「東京電力」という。)は,本年7月22日,東京電力福島第一原子力発電所(以下「福島第一原発」という。)の敷地内から,大量の放射性物質を含む汚染水が,海に流出していることを認めた。

福島第一原発では,1~4号機の海側に設置された観測孔(井戸)において本年5月24日に採取された地下水から,1リットルあたり1000ベクレルのストロンチウム90,同50万ベクレルのトリチウムが検出されていたが,東京電力がこの事実を公表したのは,地下水の採取から3週間も経過した6月19日のことであった。しかも,東京電力は,これらの放射性物質について,海水中のトリチウム濃度に変動が見られないなどの理由で,汚染された地下水の海への流出を否定していた。

しかし,これ以降も,複数の観測孔において,相次いで高濃度の放射性物質に汚染された汚染水が観測されていた。また,上記観測孔に近い1~4号機の取水口北側で本年6月21日に採取した海水から,福島第一原発事故(以下「本件原発事故」という。)以降最も高い観測値である1リットルあたり1100ベクレルのトリチウムが検出され,汚染された地下水が海へ流出している疑いが極めて強くなった。

これを受け,原子力規制委員会の6月26日の定例会合では,委員から原子炉建屋内の高濃度汚染水が敷地内の地下水に混入し,海に流出している疑いが強いとの指摘がなされ,同委員会の田中俊一委員長は,7月10日の記者会見において「海洋の汚染は…事故時に一番汚染してしまったわけですけれども,その後もずっと,この2年間も続いていると思います。」と述べた。

しかし,その後も東京電力は,汚染水の流出を認めようとせず,本年7月22日になってようやく,福島第一原発の敷地海側にある観測孔の水位が潮位にしたがって変動したことなどの理由から,汚染水の海への流出を認めるに至ったものである。

福島第一原発では,本年4月にも,地下貯水槽からの汚染水の外部流出事故が相次いで発生しているが,東京電力は,同月3日に地下貯水槽の外側から採取した水から放射性物質を検出し,かつ,貯水槽の水位低下を認識していたにもかかわらず,汚染水の外部流出を公表したのは,同月6日のことであった。

こうした経緯からすれば,東京電力が本来公表されるべき事実を隠蔽し,その結果として早期の対応を不可能にしてきたことは否定できない。このような東京電力による事実の隠蔽と対応の遅れは,本件原発事故以前にも度々指摘されてきたところであり,本件原発事故後においても,国会事故調査委員会からの調査要請に対して原子炉建屋内の状況について虚偽の説明を行ったり,また,本年3月に第一次冷却系が停止した際にも公表が遅滞するなど繰り返されてきた事態である。現在,本件原発事故の収束及び福島第一原発1~4号機の廃炉に向けた作業は,東京電力が行っている。本件原発事故を惹起した責任が,原子力事業者である東京電力にある以上,事故収束と廃炉に向けた作業を東京電力が担うべきは当然であるが,上記のような東京電力の隠蔽体質と対応の遅れは,東京電力が,本件原発事故の収束に向けた対応能力を失っていることを示している。同時に,国が,これまで,原子力事業者に対する必要な規制と監督を怠ってきた結果,本件原発事故が発生したことは,政府事故調査委員会報告書や国会事故調査報告書でも明らかにされており,国にも本件原発事故の責任があることは明白である。したがって,国は,まず,本件原発事故の収束及び廃炉に向けた作業等を,東京電力任せにするのではなく,予算措置も含めた具体的関与を行うべきである。

次に,原発事故発生後の対策としては,放射性物質の環境への放出を防止すること(「止める」「冷やす」「閉じ込める」のうちの「閉じ込める」)が何よりも重要であるが,上記の事実は,本件原発事故後,2年4ヵ月あまりを経過した現在でも,放射性物質の環境への放出が続いていることを示している。

現在,福島第一原発の所在する福島県においては,周辺海域での漁業の(試験)操業や,放射線量,放射性物質の調査を経ての海水浴場の海開きなどの取り組みが進められている。放射性物質の海への流出及び東京電力による事実の隠蔽,不誠実な対応は,安全の確保と地域の復興に向けられたこれらの努力を踏みにじり,被ばくによる健康被害の懸念とともに,漁業や観光業などへの風評被害をさらに強めるものであって,これらの被害は,はかりしれないものとなるおそれがある。

かかる,汚染水流出という事態を受けて,福島県は,周辺海域の放射性物質の監視体制を強化し,海水については月1回,底質については3か月に1回の調査を行うこととした。しかし,東京電力及び国は,放射性物質の海への流出を完全に防止すべく,海側遮水壁の設置に加え,港湾外への放射性物質流出防止用のフェンスの設置などの対策を急ぐとともに,福島県によるモニタリングと連携して,例えば,周辺海域の底質について,福島県が調査を実施しない月に調査を実施するなど,海水や底質を含む周辺環境のモニタリングをより強化すべきである。

よって,当会は,

1. 国に対し,本件原発事故の収束及び廃炉に向けた作業,放射性物質の敷地外への放出を防止する作業等について,東京電力任せにせず,国の責任において具体的な作業計画を決定し,実施すること

2. 東京電力及び国に対し,本件原発事故に由来する放射性物質の海への流出を完全に防止するため,直ちに,流出防止用のフェンスの設置などの対策を講じるとともに,海水や底質を含む周辺環境のモニタリングを強化することを求めるものである。

以上

2013年(平成25年)8月6日
福島県弁護士会
会長 小池 達哉

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