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福島第一原子力発電所事故による公害被害からの生活と環境の完全回復を求める決議

2011年(平成23年)3月11日に発生した東京電力福島第一原子力発電所事故(以下、「福島原発事故」という)は、福島県内外の広い範囲に大量の放射性物質を放出し、その放射性物質は、未だ環境中にとどまっているなど、未曾有の被害をもたらし続けている。

この福島原発事故の特質は、その被害範囲が広範であり、かつ、被害そのものが継続的かつ長期に及ぶこと、さらに被害の内容が地域及び住民の生活を根本的に破壊するものであったということにある。これらの被害の特質に鑑みれば、福島原発事故は、東京電力という地域独占事業者が、原子力発電という事業活動の過程において、有害物質である放射性物質を大量に環境中に放出し、広範な範囲の環境を汚染した事故であって、日本の近代史上まれにみる大規模な公害被害を惹起したと言わざるを得ない。

このように、福島原発事故被害は公害そのものなのであるから、その被害の救済は、単に金銭的賠償だけでなく、第1に環境汚染からの回復、すなわち放射性物質の除去による環境回復、第2に被ばくによる将来の健康影響に対する予防対策、すなわち被害住民の長期的継続的健康管理、第3に被害者の生活・生業回復に向けた原状回復、これらが一体として図られなければならない。

まず、環境汚染からの完全なる回復を図るためには、①福島原発事故以前の環境を目標に、汚染からの完全回復を目指すべき理念が確認されること、②環境回復手段の決定プロセスに、最大の利害関係人である汚染地域住民が参加すること、③継続的かつ詳細なモニタリングの実施と、その結果が住民に対して遅滞なく開示されること、④環境回復措置の財源においては、公害問題における基本原則である汚染者負担の原則を貫徹し、原因企業である東京電力及び原子力発電を国策として推進してきた(規制権限を適切に行使してこなかった)国がその全てを負担することで財源論による制約を来さぬようにすること、がそれぞれ実現されなければならない。

被ばくによる将来の健康影響に対する予防対策としては、被害住民の長期的継続的健康管理が必須であるが、これに関して、福島県が実施している「県民健康管理調査」は、県内居住者全員を対象とする質問票で被ばく線量を推計する「基本調査」と18歳以下の全県民を対象とする甲状腺超音波検査などを内容とする「詳細調査」に分けられる。

この「県民健康管理調査」の目的は、将来健康影響が生じる可能性を前提とし、健康影響の調査と予防におくべきであるところ、実際には「県民の健康不安の解消や将来の健康管理の推進等を図る」ことにおかれている。また、「…事故による放射線の健康影響については、現時点での予想される外部及び内部被ばく線量を考慮すると極めて少ない」との認識も示されている。これまで福島県が公表した調査方法等についても不十分な点が残されており、放射線被ばくによる県民の健康被害防止との観点からは実効性あるものにならないのではないかと懸念される。

今回の原発事故による放射性物質の大量放出の責任は、事業者である東京電力はもとより、原子力発電を国策として推進し、必要な安全規制措置を怠ってきた国にある。そうである以上、住民の健康被害を防止するための措置を講ずるべき責任も、東京電力と国にあることは言うまでもない。福島県が独自に健康調査を行うことの意義は大きいが、健康調査を行う以上、それはできる限り徹底したものにすべきであり、福島県は、健康調査の費用や検査にあたる医療関係者の確保等を、東京電力と国に求めるべきである。同時に、健康調査の結果は、今回の原発事故による健康被害を明らかにし、今後の放射線防護・被ばく治療の研究にも役立てることができるようなものにする必要がある。それを実現してこそ、将来の県民の健康被害の防止が十分に図られるからである。

被害者の生活・生業回復に向けた原状回復については、福島原発事故は、前記のとおり、その被害が広範に及んでおり、その被害も長期間継続するものであって、当該地域の自然環境、経済、文化などを根本から徹底的に破壊してしまったものであり、このような深刻な被害の原状回復を図るためには、現在の中間指針及び追補の内容にとらわれることなく、金銭による完全賠償がすすめられることべきことは当然であるが、これとともに、避難指示、または、自己決定により、元の土地を離れ、別の土地へ避難することを選択した避難者の生活支援として、居住支援、就労支援、教育支援、介護支援、医療支援、心療支援、地域コミュニティ維持・創設支援などが是非とも必要である。 また、元の土地に残る選択をした原発被災者についても、その生活の不安を解消するための支援として、国が積極的に社会的インフラ(病院、介護施設など)整備に取り組み、商業施設や教育・文化施設などが衰退してさらなる過疎化を招く悪循環に陥ることのないよう地域振興を図る政策を設けるべきである。

以上は、国策である原発事業によって当該地域の住民の生活を破壊した国が負うべき、当然の責務であり、原発事故被害者の生活再建支援のための特別立法がなされるべきである。

よって、福島県弁護士会は、これらの福島原発事故による公害被害からの生活と環境の回復を求めるため、以下のことを求める。

1.環境回復措置

(1)東京電力、国及び除染に関係する地方公共団体は、福島原発事故が公害被害であることを自覚し、福島原発事故以前の環境への完全なる回復を目指すこと

(2)国は、環境回復措置が将来の地域のあり方と住民の生活に重要な影響を及ぼすことを念頭におき、長期にわたる除染活動の全過程を通じて、住民意思を十分に反映すること

(3)国は、汚染状況の調査が、住民参加の下での的確な環境回復手段の選択のために重要であることから、放射性物質の核種の分析も含めたより詳細なモニタリングを継続して行い、かつ、その調査結果のすべてを遅滞なく公開すること

(4)東京電力及び国は、汚染者負担の原則に即して、完全なる環境回復に向けた措置に要する費用を例外なく負担すべきこと

2.被ばくによる将来の健康影響に対する予防対策福島県は、県民健康管理調査実施にあたり、

(1)調査目的を県民の健康被害予防におくことを明確にすること

(2)被ばくにより生じうる多様な健康影響に対処できるよう検査項目を拡大し、甲状腺超音波検査、血液検査、一般検診等を継続的に実施できる体制を構築すること 

(3)県民が自己の調査結果にアクセスし、健康被害予防に役立てることのできるような体制を構築すること。

(4)全体の調査結果をはじめとする調査の全過程を広く公開し、被ばく治療や放射線防護学研究に役立てることができるようにすること。

東京電力及び国は、

(5)福島県の県民健康管理調査に関し、福島県が行う調査の費用を全額負担すること

(6)福島県の県民健康管理調査に関し、検査機器の調達や検診にあたる医療従事者の確保について、福島県に対し、最大限の支援をすること。

3.被害者の生活、生業回復に向けた原状回復

東京電力は、

(1)原子力損害の賠償にあたって、中間指針のみに捕らわれることなく、個々の被害実態に応じて、完全賠償を実施すること

国は、

(2)福島原発事故被害者の自己決定を尊重しつつ、その将来の生活再建のために、居住支援、就労支援、教育支援、介護支援、医療支援、地域コミュニティ維持・創設支援、地域振興等を内容とする特別法を制定すること

以上、決議する。

2012年(平成24年)02月18日
福島県弁護士会
会長 菅野 昭弘

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